近年はMicrosoft TeamsやSlackなどのオンラインツールが増え、新たなコミュニティが雨後の筍のように登場しています。
仕事でも、コミュニティを作ったり、運営する立場になった人もいるでしょう。
しかし、立ち上げてみたものの、活性化せずに頭を悩ますケースは少なくありません。
このような悩みへの解決策として、書籍「世界2.0」“うまく回っている生態系の特徴”の部分をコミュニティ運営に置き換えて解説します!
皆さんの仕事に応用しやすいように、私が約1年前に立ち上げた約200名の社内コミュニティの運営経験も交えながら解説します!
この記事の要約
●うまく回っているコミュニティの特徴は 「自律的」「有機的」「分散的」である。
●参加者が「実用的価値」「感情的価値」「社会的価値」のいずれかを実感できる工夫が必要。
●コミュニティの運営は「生産者」と「消費者」が共存する仕組みを創る。
うまく機能しているコミュニティの特徴「自律的・有機的・分散的」
うまく機能しているコミュニティには「自律的」「有機的」「分散的」という3つの特徴が揃っています。
仕組みとして回り、参加者にそれぞれの役割があり、自分の利益のために自分で考えて行動する。
こういう集団は、全体としてますます反映していくでしょう。
引用:世界2.0
順番に「①自律的」「②有機的」「③分散的」の3項目を解説していきますね。
①自律的であること
うまく回っているコミュニティの特徴として1つ目は「自律的」です。
ここでの自律的とは「指示や命令がなくても個々の参加者が自分で考えて行動し、改善を繰り返すことができる」という意味です。
外部からの指示にしたがって生態系が回るのではなく、まるで集団そのものに意思があるかのように動くことができる。
自律的に回っている生態系はうまくいっている証拠です。
引用:世界2.0
コミュニティ運営では、参加者がルールを理解し、「自分が何をすればよいか分かっている状態を保つ工夫」が必要です。
運営者から参加者へ、ルールやシステムを何度も伝え続けることが大切です。
コミュニティであれば、「ルールをいつでも見れるようにする」「参加者の動線イメージを伝える」などの工夫が有効です。
運営者と参加者にはコミュニティに対する熱量が異なるので「認識の溝」があって当然です。
認識の溝を運営側が肯定的に理解し、参加者の目線に立った工夫を意識してみましょう。
②有機的であること
うまく回っているコミュニティの特徴として2つ目は「有機的」です。
有機的とは、「それぞれの参加者がお互いに連携しながら、一つの生態系を成り立たせていること」です。
生命は信じられない数の細胞が集まって相互作用を進めながら、一つの生物として活動します。
生命と同様に、生態系もそこに参加する各人が交流しながら、全体を形づくっていくものです。
引用:世界2.0
コミュニティが有機的であれば、参加者同士が相互にコミュニケーションを取り始めて、横のつながりが強固になっていきます。
コミュニティの運営者は、「参加者1人1人が交流しながら全体を形づくる仕掛け」を意識しましょう。
例えば、カテゴリー別に参加者同士のチャット機能や、参加者同士が直接交流する機会の提供などが挙げられます。
一般的に、コミュニティでは新たな参加者や退出者で人の入れ替わりが発生します。
人の出入りが生じてもコミュニティの同一性を保つために、普段から参加者同士がつながっている状態を保てるようにしましょう。
③分散的であること
うまく回っているコミュニティの特徴として3つ目は「分散的」です。
分散的とは、「司令塔の役割がいなくなっても、全体が止まることなく動き続ける状態」です。
分散的な生態系は、司令塔なんて必要ありません。
指揮官がどこにもいなくても、全体が止まることなく動き続けます。
引用:世界2.0
究極的には「自然界」のように、個々の動植物がバラバラに動いているようでありながら絶妙なバランスで保たれている状態が理想です。
会社でよくあるのが、上からの指示で強制的に作られた「中央集権的コミュニティ」が盛り上がらずに自然消滅していくパターンです。
コミュニティの場合、立ち上げ当初は中央集権的になることはあります。
しかし、機能し始めたら徐々に分散的なコミュニティへ移行できるように、運営者が手を放すことも大切です。
誰かに依存し続ける組織や、特定の人に利権が集中する組織は、強固なようで崩れやすいのです。
特徴は理解できたけど、コミュニティをうまく運営するコツは?
コミュニティ運営のコツは「①3種類の価値提供」と「②生産者と消費者のバランスを意識する」の2つが特に重要です!
それぞれ解説していきますね。
コミュニティ運営のコツ①「3種類の価値提供」
コミュニティとは「価値あるものをやりとりする環境」です。
参加者に「価値がある」と感じてもらえるコミュニティにすると活性化していきます。
コミュニティを運営する時は、参加者にどのような「価値」を提供するか?を意識しましょう。
そして、さらに一歩進んで「参加者はどんな価値を求めているのか?」を探り、ニーズを満たすことが大切です。
ここでの「価値」とは、次の3つに大別されます。
- 価値の3分類
- ①実用的価値(役に立つ・儲かる)⇒実生活で役立つモノ・サービス・情報の価値のこと。
②感情的価値(共感・ポジティブ)⇒感情にポジティブな影響を与えてくれる価値のこと。
③社会的価値(世の中全体にプラス)⇒社会にとってプラスになれば価値を感じること。
お金を稼ぐ系のオンラインサロンは「実用的価値」、歌手やスポーツのファンクラブは「感情的価値」、地域のボランティア活動は「社会的価値」というイメージです。
ちなみに、3つの価値の大きさは同一ではありません!
これらの3つの価値の大きさは同じではありません。
「①実用的価値>②感情的価値>③社会的価値」の順番に大きくなります。
皮膚感覚で考えればわかるとおり、自分の役に立つことに人間は一番強く価値を見出すものです。
衣食住が満たされ、まともに生きていける状態でなければ、感情的な価値に対価を払おうとは思えません。
ボランティアや寄付も、余裕のある人でなければ興味をもちにくいのが現実です。
引用:世界2.0
仕事でコミュニティ運営をする時は、まず「実用的価値」から意識してみましょう!
その通りですね。
時代の流れから「社会的価値」の比重は大きくなっていくと予想されます。
コミュニティ運営のコツ②「生産者と消費者の共存」
コミュニティの参加者には、価値をやりとりする「生産者」「生産者兼消費者」「消費者」の3タイプが存在します。
運営者は、生産者と消費者が共存共栄できるよう、お互いにメリットが享受できる仕組み作りが必要です。
ここでいう「生産者」や「消費者」という単語は、あくまでも「価値を作る側(生産者)」と「価値を感じる側(消費者)」という意味です。
引用:世界2.0
- 生産者(少数)⇒3種類の価値を作って供給する人
- 生産者兼消費者(少~中)⇒最初は消費者であるが、一部分のみ生産者にも回る人
- 消費者(多い)⇒価値を見たり感じたり評価する人
生産者と消費者の例
●企画を考える人⇒生産者
●企画に参加し、評価する人⇒消費者
●情報を発信する人⇒生産者
●発信された情報を見て、コメント等の反応をする人⇒消費者
一般的に、どのコミュニティでも生産者の人数よりも消費者の人数のほうが圧倒的に多いパターンが大半です。
私の経験上、「最初の生産者」はコミュニティ運営者が担うことになります。
価値を作りだす生産者に引き寄せられて消費者が集まるようにする、という順番で進めていきましょう。
こう思った方は、その通りです。
コミュニティ運営で真価が問われるのは、いかに「生産者兼消費者」を生み出せるか?という点です。
なぜなら、コミュニティの活性化は生産者兼消費者の存在がカギであるからです。
例えば、メルカリ等のフリマアプリをイメージしてみましょう。
「商品の販売をしながら、時には商品を購入する人」はアプリの利用頻度が多く、そのような人に消費者も刺激されて活性化していくのです。
でも、コミュニティを運営すると、なかなか消費者の状態から変わってくれないんですよね。
その悩みはとてもわかります。
私の場合は、以下の4ステップで生産者兼消費者を増やしました。
①消費者(参加者)の中から「生産者の候補」を見つけ出す
②生産者の候補となった人とコミュニケーションをとる
③生産者となれるように支援する
④「生産者兼消費者」が誕生する。
コミュニティに参加した人の中には、価値提供できる能力がある人でも心理的なハードルを理由に生産者となることを躊躇しているケースがあります。
コミュニティ運営者の人は「隠れている才能を発掘する」という作業を意識してみましょう。
まとめ
今回は、書籍「世界2.0」の中から、コミュニティ運営に役立つ内容をまとめてみました。
この記事のまとめ
●うまく回っているコミュニティの特徴は 「自律的」「有機的」「分散的」である。
●参加者が「実用的価値」「感情的価値」「社会的価値」のいずれかを実感できる工夫が必要。
●コミュニティの運営は「生産者」と「消費者」が共存する仕組みを創る。
コミュニティは運営者と参加者には意識の溝があって当然です。
「ルールを作り、何度も丁寧に説明し、参加者に価値を提供する」というところからスタートしてみましょう!
コミュニティは生き物のように変化していくので、対話や観察しながら丁寧に運営していくと、次第に活性化していきますよ。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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