日銀が2024年3月に「マイナス金利政策の解除」を決定しました。
17年ぶりの利上げということで日本の金融政策は転換期を迎えることとなり、住宅ローンの金利にも影響が出るでしょう。
現在、住宅ローンを借りている多くは「変動金利」だと思いますので、こんな不安を感じている方がおられるのではないでしょうか?
住宅ローンは返済期間が長期に渡るため「住宅ローンの返済負担を少しでも減らした方が得なのでは?」と、繰上げ返済を考えている方もおられるでしょう。
繰り上げ返済を行えば良いとは限りません!
実は、繰り上げ返済をしたことで「知らぬ間に損していた」と後悔する人も出ています。
本記事では、住宅ローンの繰り上げ返済の「仕組み」「メリット」「デメリット」についてわかりやすく解説します。
今後の返済計画を検討する知識としてぜひお役立てください!
この記事のポイント
●返済期間短縮型は「毎月の返済額を変えずに返済期間を短縮する方法」
●返済額軽減型は「返済期間を変えずに毎月の返済額を減らす方法」
●金利を減らす効果は、返済期間短縮型の方が高い
●繰り上げ返済のメリットは①総返済額減少②金利上昇リスク対策③心理的負担軽減
●繰り上げ返済のデメリットは①節税額減少②団信の保険額減少③投資の機会損失
●繰り上げ返済よりも、ローン借り換えを検討してみる
繰り上げ返済の仕組みとシュミレーション
繰り上げ返済とは、「毎月の返済額とは別に一定額を追加返済すること」です。
ちなみに、繰り上げ返済を行った金額はすべて元本の返済に充てられます。
返済額に含まれている「利息」は、元本に対して計算されています。
よって、繰り上げ返済をすることで元本が減少し、利息の返済額が軽減するのです。
ちなみに、繰り上げ返済を行う金額は「一部」「全額」の2パターンから選択可能です。
一般的には「一部繰り上げ返済」のケースが多く、一部繰り上げ返済には下記2種類があります。
毎月の返済額 | 返済期間 | |
返済期間短縮型 | 変更なし | 短縮する |
返済額軽減型 | 減少する | 変更なし |
返済期間短縮型は「毎月の返済額を変えずに返済期間を短縮する方法」です。
より早く住宅ローンを返済することになるので、金利負担が大きく下がります。
繰り上げ返済で「金利を減らすことが目的」という方は、返済期間短縮型を選んでいます。
返済額軽減型は「返済期間を変えずに毎月の返済額を減らす方法」です。
金利負担軽減メリットは期間短縮型よりも少ないですが、毎月の返済額が軽減するので現在の家計収支が楽になります。
返済額軽減型は、返済総額で考えた場合「返済期間短縮型」よりも軽減効果は劣る点に注意が必要です。
同じ条件で「返済期間短縮型」と「返済額軽減型」をシュミレーションしてみましょう!
- 繰り上げ返済のシュミレーション(前提条件)
- ●借入額:3,000万円(金利1.0%/借入期間35年)
●繰り上げ返済額:1,000万円
●繰り上げ時期:借入から10年目(元本残高22,500,000円)
繰り上げ返済なし | 返済期間短縮型 | 返済額軽減型 | |
返済期間の残年数 | 25年 | 13年 | 25年 |
月々の返済額 | 84,685円 | 84,685円 | 46,887円 |
利息減少額 | 0円 | 2,085,789円 | 1,301,662円 |
今回のシュミレーションの場合、返済総額では返済期間短縮型の方が約78万円も減少するという結果でした。
繰り上げ返済のメリット
繰り上げ返済の仕組みとも一部重複しますが、メリットは下記3点です。
- ローンの総返済額が減る
- 将来的な金利上昇リスクへの対策になる
- ローンに対する心理的ストレスが軽減される
それぞれ解説していきます!
メリット①ローンの総返済額が減る
繰り上げ返済は「ローン総返済額の減少」が大きなメリットです!
なぜなら「繰り上げ返済⇒ローン残高(元本)が減少⇒利息の返済額が軽減⇒総返済額も減る」という仕組みだからです。
少しでも繰り上げ返済でローン返済額を減らしたいなら「返済期間短縮型」を選んでおきましょう。
メリット②将来の金利上昇リスクへの対策
将来的に金利が上昇した場合は返済額も増加するため、繰り上げ返済は負担額の軽減になります。
日本は長らく低金利が続いているため、住宅ローン金利も安く抑えることができている人は多いと思います。
しまし、2024年3月に日銀がマイナス金利の解除を決定し、金利上昇リスクに注目が集まっています。
金利が安いうちに繰り上げ返済を行うことで、金利上昇による負担額増加への対処ができますね。
メリット③ローンに対する心理的ストレスが軽減される
住宅ローンという「借金」ある状態がストレスに感じている人は心理的負担が軽減できます。
理論上ではなく、心情的に「借金がある状態から少しでも脱したい」という方は一定数おられます。
そのような方は、損得よりも繰り上げ返済によって心理的ストレスが減ることの恩恵は大きいでしょう。
繰り上げ返済のデメリット
前項まではメリットをご紹介しましたが、繰り上げ返済にもデメリットは存在します。
特に下記3点は必ず把握しておかなければ「損」をすることもありますので、知識を深めておきましょう!
- 税制上のメリットが減る
- 団信の保険金額が減ってしまう
- 資産運用の機会損失になる可能性がある
デメリット①税制上のメリットが減る
住宅ローンには、毎年末の住宅ローン残高の一定割合が所得税から控除される税制上のメリットがあります。
住宅ローン控除は、最大13年間にわたって年末の住宅ローン残高の0.7%が所得税額から控除(所得税から控除しきれない場合は、翌年の住民税から控除)される制度です。
国の制度変更に伴い、「控除率」や「期間」は物件を購入した年により異なります。
「新築」「中古」によって以下の通り分かれています!
住宅の種類 | 住宅環境性能等 | 年間最大控除額 | 控除期間 | 控除率 |
新築買取再販住宅 | 長期優良住宅低炭素住宅 | 35万円 | 13年間 | 0.7% |
新築買取再販住宅 | ZEH水準省エネ住宅 | 31.5万円 | 13年間 | 0.7% |
新築買取再販住宅 | 省エネ基準適合住宅 | 28万円 | 13年間 | 0.7% |
新築買取再販住宅 | その他一般住宅 | 21万円 | 13年間 | 0.7% |
中古住宅 | 長期優良住宅低炭素住宅ZEH水準省エネ住宅省エネ基準適合住宅 | 21万円 | 10年間 | 0.7% |
中古住宅 | その他一般住宅 | 14万円 | 10年間 | 0.7% |
上の表は2023年中に入居した場合です。
2024年以降の入居の場合、新築と買取再販住宅の最大控除額は減少し、一部控除期間も短縮されます。
現在の控除率は0.7%ですが、制度改定前に契約している方は控除率が1.0%となっています。
住宅ローン残高から1.0%または0.7%の額が税金が控除されるため、左記の金利以下で住宅ローンを借りていれば「税金の控除額>住宅ローン金利」になります。
つまり、住宅ローンの金利は「実質なし」というだけでなく、「得をしている計算」となります。
このようなケースでは、住宅ローン控除の適用期間中は繰上返済をしない方がお得といえます。
なぜなら、住宅ローン控除は、ローン残高に応じて一定額を所得税や住民税から控除される仕組みだからです。
もし繰り上げ返済すると、ローン残高が減少することで税金の控除額も減ってしまうのです。
例えば、省エネ基準適合住宅で年末時点のローン残高が3,000万円であれば、3,000万円×0.7%=21万円を所得税から控除できます。
しかし、仮に500万円の繰り上げ返済をすると、控除額が3.5万円減少してしまいます。
金利が0.7%以下の方なら「年間の金利負担<控除額減少分(3.5万円)」となるため、繰り上げ返済せずに金利分を負担したほうがお得になるのです。
繰り上げ返済を検討する際は、控除額への影響も試算しておきましょう!
デメリット②団信の保険金額が減ってしまう
住宅ローンを契約する際に団体信用生命保険(団信)に加入している方は、繰り上げ返済額に応じて保険金が減ることになります。
団信とは、ローン契約者の生命保険金を残った住宅ローンすべての返済に充当する保険です。
通常、契約者が亡くなってしまった場合、住宅ローン残高と同額の保険金を支払われることが一般的です。
このような点から、団信は生命保険としての側面があります。
しかし繰り上げ返済を行うことで、実質的には返済額の分だけ保険金が減少することになります。
このような点から、団信があれば過度に繰り上げ返済は行わずに、現金を貯めるなど大きな出費に備えるリスクヘッジをしておく方がよいこともあるのです。
デメリット③資産運用の機会損失になる可能性がある
まとまった資金を繰り上げ返済に使うことで、株式投資など資産運用によってお金を増やす機会を失う可能性があります。
住宅ローンの金利は1.0%以下の方が多いでしょう。
株式投資のインデックス運用を行うと年率4.0%のリターンが期待値とされています。
よって、まとまった資金は資産運用に回した方がよいと考えられます。
このように、繰り上げ返済によって「本来なら投資によって得られたであろう利益を失う」という可能性があるということは必ず知っておくべきでしょう。
また、繰り上げ返済によって手持ち資金が減少すると、急な支出への対応が取りにくくなることにも注意が必要です。
代表的な支出イベントには次のようなものがあります。
- 家電の故障による買い替え
- 病気、ケガによる治療費
- 家、家具の修繕
- 車の買い替え
よくあるミスは「低金利の住宅ローンを繰り上げ返済して、車の買い替え時に自動車用のローンを組む」という行為です。
一般的に車のローンは住宅ローンよりも圧倒的に高金利なので、それなら繰り上げ返済せずに車を一括購入した方がはるかにお得ですよ!
繰り上げ返済よりもローン借り換えの検討がオススメ
住宅ローンの借り換えとは、高い金利で組んでいた住宅ローンをより低い金利で組みなおし、毎月の支払額を減らすことです。
住宅ローンの元金は数千万単位と金額が大きいため、少しでも金利が安くなれば返済額も大きく減少します。
低金利の住宅ローンに借り換えが成功すれば、「手元資金を使わずに返済額を減らす」ということが達成できるので一石二鳥です!
借り換えの試算は無料でできます。
繰り上げ返済よりも、まずはローンの借り換えから検討しましょう!
住宅ローンの借り換えを成功させるポイントは「正確な試算を行う」ということです。
特に、下記3点のいずれかに該当する人は、借り換えによる恩恵が得られる可能性が高いので、まずは試算を行ってみましょう!
- 現在金利が0.6%以上の人
- ローン残債が1,000万円以上の人
- 2018年よりも前に住宅ローンを契約した人
心配しなくても大丈夫です!
住宅ローン借り換えシュミレーションサイトを利用すればOKです。
「モゲチェック」が無料で便利なので最も信頼できるサイトですよ♪
「モゲチェック」は完全無料の住宅ローン比較サービスです。
実際、2022/10/1~2023/9/30における借り換え登録者の平均削減額は約210万円という実績があります。
モゲチェックでできることは以下の4点です!
- 「どこの銀行でいくら減らせるか」の情報が入手できる
- 比較一覧表で銀行ごとの違いがわかる
- 住宅ローンを借り換えるまでの手続きの流れが理解できる
- 借り換え方法のアドバイスを受けることができる
ちなみに、モゲチェックでよさそうな銀行が見つかれば、気になる銀行への審査もそのままできます!
住宅ローンの借り換えを検討している方はモゲチェックは利用必須のおすすめサイトですよ!
借り換えのメリットデメリットをさらに詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
まとめ
今回は、繰り上げ返済の「仕組み」「メリット、デメリット」を解説しました。
この記事のまとめ
●返済期間短縮型は「毎月の返済額を変えずに返済期間を短縮する方法」
●返済額軽減型は「返済期間を変えずに毎月の返済額を減らす方法」
●金利を減らす効果は、返済期間短縮型の方が高い
●繰り上げ返済のメリットは①総返済額減少②金利上昇リスク対策③心理的負担軽減
●繰り上げ返済のデメリットは①節税額減少②団信の保険額減少③投資の機会損失
●繰り上げ返済よりも、ローン借り換えを検討してみる
2024年3月にマイナス金利が解除となったことで、繰り上げ返済を検討することが出てくると思います。
しかし、現在の住宅ローン金利の水準を考えると、「ローンの利息<運用の利回り」という構図となるため資産運用に回す方がベターだと私は考えています。
それでもローンの返済額を少しでも減らしたい方は、まずローンの借り換えの試算から検討してみましょう!
本日も最後までご覧いただきありがとうございました。
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