皆さんは、自分の思考や能力で悩んだり、不満を抱いている所がありますか?
もし困っている内容が「記憶力」「情報処理力」「ネガティブ思考」のどれかであれば、脳の特徴を知ることで少し気持ちが晴れるかもしれません。
この記事では「最新の脳研究でわかった!自立する子の育て方」という書籍で解説されている、「脳の大原則」と「否定することの悪影響」が仕事と子育ての両方にとても役立つ内容だと感じたのでご紹介します。
本著の著者の1人青砥瑞人さんはUCLAの神経科学学部を飛び級で卒業し、人の成長やウェルビーイングのデザインに携わっておられる方です。
記事では私の解釈も盛り込んでいますので、もし原著をご覧になりたい方は書籍も読んでみてくださいね。
この記事でわかること
●脳の大原則は「使われなければ失くすだけ」「人間の意識は有限」「人間は本来、ネガティブ思考が作動しやすい」の3つ
●必要なことは「意識的に行動⇒無意識に行動化」し、不要なことは辞めて「記憶から切り捨てる」
●意識が分散しにくい環境を整備することが大切
●意識的に良い面を見るようにする
●否定よりも寄り添う気持ちが必要
人間の脳の特性
まずは人間の脳の特性として重要な3つの大原則をご紹介します。
私たちが日々悩んだり課題に感じてる原因は、そもそも脳の仕組みの問題だったということも少なくありません。
このように「知る」ことで視界が開けることもあると思いますのでぜひご覧ください。
脳の大原則
①使われなければ失くすだけ(Use it or lose it)
②人間の意識は有限である
③人間は本来、ネガティブ思考が作動しやすい
この3つの大原則をそれぞれ解説していきます。
脳の大原則①使わなければ失くすだけ~Use it or lose it~
脳は、無駄なエネルギーをできるだけ使わないように変化していく特徴があります。
理由は、脳の質量は体重の約2%しかないにも関わらず、体内で使われるエネルギー(グルコース)の約25%を消費するため、エネルギー効率に対して非常に敏感だからです。
皆さんの日常生活では、やり慣れている「習慣」「思考」「言動」がありますか?
これは、「エネルギー効率が抜群によい回路」を無意識に選択している結果であると考えられます。
- 脳のエネルギー効率
- ●新しいこと(やり慣れていないこと)⇒エネルギーを多く費やす。
●いつもと同じこと(やり慣れたこと)⇒エネルギー消費が少なく済むように変化する。
●あまりやらないこと(やらなくなったこと)⇒切り捨てていく。
例えば、こんな経験がありませんか?
これは「学習」とも言われ、思考に使うエネルギー消費が少なくても「このお店ではこれを注文すると心地よい」ということをインプットしているので、意識せずとも最適な行動が選択されるのです。
こちらの例は、脳が「使わない回路を切り捨てた」ことによる影響です。
子供の頃にハマっていたゲームの裏技や攻略法は当時なら何でも覚えていたのに、大人になってから久しぶりにやってみたら思い出せないのも同じことですね。
エネルギーを効率的に使うために、使っていない不要な情報は切り捨てているのです。
これらの現象は脳がエネルギーを効率的に使っている証拠になりますので、もし忘れたくない情報なら定期的に思い出す作業をすると良いです。
また、英語やランニングなど「新しく始めたいこと」があれば、最初はエネルギーが必要であることを理解しておくことで「習慣化されるまでの辛抱だ」と思って努力しやすくなるのではないでしょうか。
このように、必要なことは「意識的に行動⇒無意識に行動化」し、不要なことは辞めて「記憶から切り捨てる」ということを試してみてはいかがでしょうか。
自分にとって好ましくない習慣も「エネルギー消費の少ない使い慣れた回路化」されます。
一度定着すると、改善する労力は非常に大きいので注意が必要です。
【ポイントの整理】
●その人の過去の体験や記憶が、その人の思考パターンや言動パターンを形成する
●一度出来上がった脳を短期間で劇的に変えることは難しい
●脳の癖を変えるには、新しい回路を「意識的に」「辛抱強く」使い続けることが必要

脳の大原則②人間の意識は有限である
人間の脳は思っている以上に情報処理能力が限定的です。
日常生活では絶えず五感から情報が入ってきますが、脳はそれらの情報の約1000分の1しか意識を向けることができないとされています。
つまり、脳の情報処理には限りがあるので「どの情報を処理するか?」という意識や注意を向けて決定する必要があるということになります。
例えば、マルチタスクとして「e-ラーニング動画視聴」と「文書作成」の仕事を同時にしている場面を想像してください。
以下の①と②が瞬間的に何度も入れ替わっているケースが多いと思います。
- 「 e-ラーニング動画視聴」と「文書作成」のマルチタスク例
- ①動画に意識が向いている時⇒文書作成が滞ったり、質の低い文書になる
②文書作成に意識が向いている時⇒動画の内容は聞こえるが、しっかり頭に入って来ない(聞き逃しも発生する)
こう思っている方は安心してください。
自分のせいではなく、脳の構造として「意識は有限」なだけです。
ですので、雑多な情報やストレスをできるだけ減らして、意識が分散しにくい環境を整備することが大切です。
マルチタスクを否定している訳ではありません。
もし複数の作業を同時に行う時は、「意識の濃淡が発生する」という仕組みを理解した上で、うまく意識の振り分けを使いこなしてみてはいかがでしょうか。
【ポイントの整理】
●人間の脳は構造上、情報処理能力が限定的になっている
●「意識」や「注意」を向けることで情報処理を決定する
●意識を集中させるために、余計な情報やストレスをできる限り減らす
脳の大原則③人間は本来ネガティブ思考が作動しやすい
人間の脳は、本来的に「自己否定に陥りやすい」特性を持っています。
この理由には、2つの脳の仕組みが挙げられています。
- 自己否定に陥りやすい特性
- ①エラー検知機能⇒自分や他人の欠点・弱点を見抜く機能。(計算ミスなどの検知も含みます)
②記憶の引き出し方⇒人はポジティブな記憶よりもネガティブな記憶を強く思い出してしまう傾向がある。
エラー検知機能は、欠点や弱みなどの「異変」に注意を向けさせることで、生存確率を上げようとする先天的な機能と考えられています。
もしこう思っている方は、みんな一緒なので大丈夫ですよ。
基本的に人は放っておくと、自分にも他人にも粗探しをしてしまう生き物なのです。
「人の良い面を見るように意識しましょう」という言葉を書籍などで聞いたことがありませんか?
この言葉の裏には、脳の仕組みとして無意識的に悪い面を見る特徴があるので、良い面に意識を向けるようにしなければ見えるようにならないという意図があると、私は感じています。
記憶の引き出し方では、人が意思決定をする場面で「過去の情報を引き出しながら総合的に判断する」処理方法が行われます。
その過去の情報として使われやすいのは「ネガティブな記憶」です。
例えば、ある営業トークを使って5人の顧客に提案を行った場合を思い浮かべてください。
そのうち、4人は成功したものの、1人には反感を買ってしまって上司を連れて謝罪対応を後日することになったとします。
冷静に考えると勝率80%ですが、1人の失敗経験が強く記憶に残ってしまい、この営業トークには不安が先行するようになります。
【ポイントの整理】
●人間の脳は、自己否定に陥りやすい特性を持っている。
●自分や他人の欠点・弱点を見抜く機能を持っているが、良い面は意識しないと気付きにくい。
●ネガティブな記憶の方が強く残りやすい性質がある。

【否定しない教育の重要性】人はダメ出しに対して敏感
人は、褒められることよりも否定される(ダメ出しされる)ことに対して圧倒的に敏感です。
ですので、「褒める」と「否定(ダメ出し)」は1:1では釣り合わないことを認識しておきましょう。
さらに、ネガティブな記憶を蓄積すると、新しいことに何も挑戦できない人になっていく可能性があります。

みなさんの周りには「新しいことに挑戦したがらない人」「いつも自身がなさそうな人」はおられますか?
もしおられるなら、その人の脳裏には「否定された経験」が強く刻まれているかもしれません。
そんな状況の人に
という言葉を投げかけて気付きを与えようとする人もおられますが、「否定の上書き」になるので逆効果だと私は思います。
手間はかかるかもしれませんが、そんな時こそ寄り添う心で接してみてはいかがでしょうか?
自分の子供に対して「否定する言葉」を多用してしまう人は注意しましょう。
特に幼少期は親の言葉が人格形成に大きく影響します。
自己肯定感の高い人になるか、自己否定の強い人になるかは、親の伝え方も要因となっています。
まとめ
今回は脳の特徴的な機能と、否定しないコミュニケーションについてご紹介しました。
●脳の大原則は「使われなければ失くすだけ」「人間の意識は有限」「人間は本来、ネガティブ思考が作動しやすい」の3つ
●必要なことは「意識的に行動⇒無意識に行動化」し、不要なことは辞めて「記憶から切り捨てる」
●意識が分散しにくい環境を整備することが大切
●意識的に良い面を見るようにする
●否定よりも寄り添う気持ちが必要
脳の仕組みを知ると「仕組みをうまく利用してみよう」と使いこなす方法をイメージしやすくなると思います。
実際の書籍はこちらです。とても読みやすくて勉強になりますよ。
最後までご覧いただきありがとうございました!
関連記事はこちらです。
青砥さんの著書から集中力を劇的にUPさせる4つのモードの使い分けを解説しています。
本当の意味で子供に向き合うために大切な「発達の最近接領域」という考え方を解説しています。
小学生のお子さん向けに家庭学習の環境を整えるコツをご紹介しています。
もし今回の記事を「いいね!」を思っていただけた方は、下記ボタンをポチっとクリック(応援)してもらえると嬉しいです!