みなさんは「本質的な部分に気付く」という経験がありますか?
例えば、ミーティングで議論が硬直状態になった時、「そもそも〇〇って・・」と参加者がハッとするような少し目線が違う意見が出る瞬間のことです。
このような思考力は生まれ持った才能と思いがちですが、実は考え方を学んでいけば誰でも身につけることが可能です。
そこでこの記事では問題解決をはじめ様々なビジネスシーンで役に立つ「目的思考」を解説します。
このブログ記事は、書籍「シンプルに結果を出す人の5W1H思考」を参考に、筆者の経験談も交えて作成しています。
原著も非常に学びが多いのでおすすめの書籍です。
この記事のポイント
●目的思考とは「なぜやるのか?」「どうありたいか?」まで突き詰めて考えること。
●目的思考ができていない組織は「目的の亡霊化」「手段の目的化」「目的の過度抽象化」が起きやすい。
●マーケティングでは「要は、それを使って何がしたいのか?」を構想する
●コミュニケーションの場面では「何のために?何を?どのように?」の3点セットを使う
●”説得”をする時は、「相手の立場になって疑問や懸念を踏まえた論点に答えること」が重要
●問題解決の鉄則は「目に見えている結果からさかのぼって考えていくこと」
目的思考とは?
目的思考とは、物事に取り組む時に「なぜやるのか?」「どうありたいか?」まで突き詰めて考えることです。
ビジネスにおいて、より本質的な問題解決や幅広い発想を得る場面で「目的思考」は必須の考え方となります。
物事に取り組む時、多くの人は「何をするか?」「どうやってやるか?」という手段(やり方)に意識が向きやすくなります。
そんな中でみなさんが目的思考を意識できれば、思考力で差別化することができますよ!
目的思考(どうありたいか?)と手段思考(どうやってやるか?)には、事象をとらえる深さに違いがあります。
目的思考 | 手段思考 |
潜在的ニーズ | 顕在化ニーズ |
戦略的 | 戦術的 |
ゴール | 目標 |
ありかた | やりかた |
一般的に、手段思考は表面的に見えやすい事象をとらえます。
手段思考も大切ですが、残念ながらそれだけでは根本的な課題設定・課題解決になかなかたどり着けません。
そこで、目的思考を使って「なぜやるのか?」「どうありたいか?」と、さかのぼって考えることで課題設定・課題解決の手段が妥当なのかを判断できるようになるのです。
目的思考ができていない組織に起こりやすい現象
目的思考ができていない組織では「目的の亡霊化」「手段の目的化」「目的の過度抽象化」という現象が起きやすくなります。
共通点として、次の2つの「問い」が欠如していることが原因です。
- 真の目的は何か?
- 真の目的に照らし合わせて何をすべきか?
「目的の亡霊化」「手段の目的化」「目的の過度抽象化」はどの組織でも起こる可能性があります。
対処法も記載したので参考にしてみてください!
目的の亡霊化
●事例:社員が必要性を感じていない、月例報告資料・朝の報告会など
●特徴:従来から慣習的に行われている、やらされ感満載のルーチンワーク
●影響:盲目的に過去の慣習を引きずる文化が強まると組織の活性度が低下する
●対策:「何のために」「なぜやるのか」が不明確な慣習や作業を見直す
手段の目的化
●事例:提出することが目的となり、コピペや空打ちが横行する活動報告
●特徴:真の目的が置き去りになり、目先の手段をこなすことが目的になる
●影響:作業をこなせばよいという文化が強まり、組織が硬直化する
●対策:手段の前に必ず「本来の主目的」を説明して手段の目的化を防ぐ
目的の過度抽象化
●事例:「組織活性化」「顧客志向の営業」など目的が抽象化されすぎる
●特徴:人や部門ごとに都合のよい解釈が起き、玉虫色のスローガンで終わる
●影響:人や部門によって解釈に差が生じ、目的が名目化する
●対策:具体的な行動指標や優先順位をセットで明示する
みなさんの組織ではこれら事象が起こらないように「真の目的は何か?」「真の目的に照らし合わせて何をすべきか?」という”問い”を意識し、視野を広げておきましょう。
【フレームワーク①】目的思考をマーケティングに活かす方法
マーケティングの場面では「要は、それを使って何がしたいのか?(何が実現できるのか?)」を構想することで、新たな論点やアイデアにつながりやすくなります。
そもそもマーケティングでは、顧客の「真のニーズ(目的)」を考えることが重要です。
真のニーズを把握するためには「顧客は何がしたいのか?」「どんな便益を得て、何を達成したいのか?」といった具体的な”問い”を重ねていくことが答えに辿り着く近道なのです。
マーケティングの有名な例として「ドリルの話」があります。
ドリルを買いに来た消費者は「ドリルそのもの」ではなく「穴」が欲しかったという考え方ですが、目的思考を使ってさらに深堀りすることで真の目的が見えてきます。
顕在化ニーズ | ドリルが欲しい |
表層的ニーズ | 穴が欲しい |
潜在的ニーズ(真の目的) | 棚を作りたい |
このように真のニーズを深堀りするには「ドリルを使って顧客は何をしたいのか?」「なぜドリルを使って穴が欲しかったのか?」と具体的な”問い”を重ねることが大切です。
ここまでの話を製薬会社の営業部門に置き換えて考えてみましょう。
医師が処方薬を選択する場面では「何らかの意図(真の目的)」が必ずあります。
市場データやマーケティングリサーチデータは、顕在化ニーズを捉えているケースが少なくないです。
そこで、マーケティング担当者は具体的な”問い”を重ねて「真の目的」を見つけ出し、自社製品の持つ強みで課題解決につなげるアプローチを考察することが重要な役割になります。
ちなみに、医師の「真の目的」は個々に違いがあります。
そこで重要になるのはMRの存在です。
顧客1人1人と面談しながら個々の「真の目的」を把握し、自社製品を通じて課題解決の提案を行うプロセスはMRだからこそできる役割なのです。
【フレームワーク②】目的思考をコミュニケーションに活かす方法
ビジネスシーンにおける”説明”や”説得”の場面でも目的思考を意識することで構造化された話し方ができるようになります。
コミュニケーションを前提とした思考の枠組みとして「何のために?何を?どのように?」の3点セットを使うとうまくいきます。
自分が説明した後に「この前説明したのに全然その通りに動いていないじゃないか・・。」と思った時は、目的が伝わっていない可能性が高いです。
そんな時こそ、3点セットの型を意識してみましょう!
利用シーン別に3点セットの考え方をまとめてみました。
シーン別 | 何のために (Why) | 何を (What) | どのように (How) |
計画策定 | ゴール | 基本シナリオ | 具体策 |
企業経営 | 理念 | 戦略 | 戦術・施策 |
戦略の構成要素 | 目的 | 競争優位性 | 実現手段 |
問題解決 | 問題の本質 | 解決の方向性 | 実現手段 |
顧客への価値提供 | ニーズ(コト) | ウォンツ(モノ) | シーズ(タネ) |
会議 | 目的(成果) | テーマ(議題) | 進め方 |
人が伝えるもの | 想い(心) | 論旨(頭) | 言葉(体) |
人生 | ビジョン | 計画 | 日々の生活 |
ちなみに、相手に何らかの行動を促す“説得”をする時は、「相手の立場になって疑問や懸念を踏まえた論点に答えること」が重要です。
相手に「〇〇をしてほしい」「〇〇をするべき」と提案したり主張する場合、まずは必ず以下2つの論点をセットで伝えるようにしましょう!
①なぜ〇〇をしてほしいのか?(するべきなのか?)
②どのように〇〇をするのか
①②を提案すると、相手は「③重要性」「④必要性」「⑤優先性」「⑥実行可能性」の4点を疑問に感じることが想定されます。
逆に考えると、③~⑥の説明まで十分にできれば、相手はこちらが意図する行動に至ってくれる確率が高くなりますので、必ず事前に説明の準備をしておきましょう。
説明すべきポイントを下図にまとめたので、参考にしてみてください。
相手の疑問点 | 説明ポイント | |
③重要性 | 従来通りはダメなの? | なぜ必要なのか? |
④必要性 | 私がする必要ある? | なぜあなたに依頼するのか? |
⑤優先性 | 後でいい? | なぜ今やるべきなのか? |
⑥実行可能性 | どうやればいいの? | どのようにやればよいか? |
このように、相手の思考や行動プロセスを踏まえて①~⑥の論点を伝えることで、相手の行動スイッチを的確に押すことが可能になります。
【フレームワーク③】目的思考を問題解決に活かす方法
問題解決の鉄則は「目に見えている結果からさかのぼって考えていくこと」です。
仕事をしていると様々な問題に直面し、その時々で解決を図ることになります。
問題解決の際に目的思考ができれば、残念な思考パターンの代表例である“決め打ち”と”むだ打ち”で生産性を落とすことが回避できます。
- 決め打ち⇒表面的な事象に影響を受け、根拠なく安易な打ち手に飛びつく。
- むだ打ち⇒手当たり次第に情報を収集・分析し、総花的に対策を打とうとする。
問題解決の場面では、いきなり細部の原因や打ち手に飛びついたり、やみくもに手を広げたりせず、「どんな枠組みやプロセスでその問題に取り組むか」というところから考えましょう。
問題解決の「型」は下図の①⇒②⇒③⇒④の思考ステップで考える流れが必須です!
プロセス | 具体例 | |
ステップ① | 問題の設定 | 何を解決するのか? |
ステップ② | 問題箇所の特定 | どこが悪いのか? |
ステップ③ | 原因の究明 | なぜ起こるのか? |
ステップ④ | 解決策の立案 | どうすればよいのか? |
問題解決能力の高い人ほど「問題の設定」「問題箇所の特定」から思考をスタートします。
一方で、問題解決の思考が苦手な人は「原因の究明」「解決策の立案」から思考し、「問題の設定」「問題箇所の特定」は考えないということが少なくありません。
例えば、ある病院でA製剤の売上が減少しているとします。
そこで「医師への面談数を増やす」「講演会を企画する」といった解決策からいきなり議論するのは最も筋の悪い思考方法です。
また、「なぜ売上が減少したのか?」と考えるのもまだ”大粒の問い”なのでどうしても多くの原因が挙げられるため悪手です。
このように「なぜ悪いのか?」という”問い”からスタートすると悪手になります。
問題解決のシーンでは「どこが悪いのか?」という”問い”から思考を始めましょう!
ちなみに、「どこが悪いのか?」という取り組むべき問題点を明確にするコツは「目標(あるべき姿)と現状のギャップ」を押さえることです。
ビジネス書などで「目標ー現状=問題」という考え方は何度も見聞きしたので知っているという人は多いと思います。
しかし、意外と「目標(あるべき姿)」が不明確で、問題が発生した時に解決策が浮かばずに困っている人が私の周りには多数おられます。
みなさんの周りにも、得意先の対策を検討する時に「そもそも最終的にどういう状態にしたいの?」と目標の質問を受けて、何も答えられない人はいませんか?
もしそのようなシチュエーションに遭遇した時は、下記のテンプレートで思考を整理してみましょう!
いつまでに When | どこで Where | 誰が Who | 何を What | 何のために Why | どの程度 How much | どうなる How | |
目標 | |||||||
現状 | |||||||
ギャップの有無 |
このテンプレートで「ギャップ有」となった部分が「できていない状態=問題」となります。
ここから「問題の設定」⇒「問題箇所の特定」⇒「原因の究明」⇒「解決策の立案」へと思考を進めていきましょう。
まとめ
この記事では、書籍「シンプルに結果を出す人の5W1H思考」を参考に筆者の経験談も交えて解説しました。
この記事の要約
●目的思考とは「なぜやるのか?」「どうありたいか?」まで突き詰めて考えること。
●目的思考ができていない組織は「目的の亡霊化」「手段の目的化」「目的の過度抽象化」が起きやすい。
●マーケティングでは「要は、それを使って何がしたいのか?」を構想する
●コミュニケーションの場面では「何のために?何を?どのように?」の3点セットを使う
●”説得”をする時は、「相手の立場になって疑問や懸念を踏まえた論点に答えること」が重要
●問題解決の鉄則は「目に見えている結果からさかのぼって考えていくこと」
多くの人は手段にばかり意識が向くので、「目的」を考える習慣があるだけで周囲とは思考力で差別化できるようになりますよ!
ぜひ日々の仕事で試してみてください。
本日も最後までご覧いただきありがとうございました。
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