製薬会社MRの実態調査データ「MR白書」をご存知でしょうか?
本調査は2001年から調査結果が残されており、MR数の推移や薬剤師資格保有者などの長期トレンドが把握できます。
この記事では、過去の調査結果をグラフ化し、継時的推移を把握しやすくなるように解説しています。
また、最後に医薬品卸の従業員数とMS数の推移も掲載しましたので、業界の現状把握にお役立てください。
この記事はこんな方におすすめです。
この記事のポイント
●国内MRの総数は53,586人で、前年度から3,572人減少。
●単年度で3,572人の減少は過去最大
●薬剤師免許を保有するMRは5,276人で、前年度から279人増加(全体の9.8%)
●医薬品卸MSの従業員数は53,461人で、前年から1,186人減少
【製薬MR数 推移】2001~2020年度の国内MR総数の推移
国内でMR業務についている者の総数は53,586人で、前年度から3,572人減少しました。
1年あたり3,572人の減少は過去の本調査では最大の減少数となっています。
2年間でMR数は約6,000人も減少し、このトレンドは加速している状況です。
3年連続6万人を割り込んだことに加えて、今後の国内医薬品市場予測からも、当面6万人の大台に戻ることは難しいのではないかと考えています。
理由は、3つの環境要因です。
3つの環境要因
①日本の医薬品市場は低成長が予想されている
米国の調査会社IQVIAが発表している医薬品市場予測レポートでは、2013年~2018年の市場成長率は年平均1.0%と先進10カ国の中では最低という厳しい結果に加え、2019~2023年の成長率は-3%~0%との予測も出ています。
②デジタル化シフトが加速
m3などデジタルプロモーションがこれまで進展していましたが、2020年のCOVID-19の影響でMRの仕事もデジタル化が益々加速しています。
③患者数の多い大型製剤の減少
生活習慣病など慢性疾患で患者さんの数も多い製剤は、1製剤で500億~1000億を狙えるものもありましたが、開発競争激化や開発一巡で大型化が狙いにくい市場環境となり、1製剤に多くのMR資源を投入していく方針は取りにくくなってきています。
最新データのチェックポイント
●MR総数は53,586人
●単年度で3,572人の減少は過去最大
●1年あたりのMR減少数は2年連続過去最大を更新しており、減少トレンドが顕著
【MR認定試験】2003年以降の受験者数推移

MR試験の受験者数は、データが残っている限りでは初めて2,000人を下回りました。
MR数が減少トレンドであることを前項でご紹介しましたが、MR認定試験受験者数の減少はさらに顕著であることが分かりました。
MR試験は、新卒・未経験転職者はほぼ100%受験しますので、MRの新規雇用数自体が減少していると考えられます。
特に2015年からの減少トレンドが注目すべきポイントです。
2015年以降の減少要因(仮説)
●世界の医薬品市場の中で、日本市場が衰退し始めた
●降圧薬などに代表される1000億円のブロックバスターが減少
●後発医薬品の普及
●治験および医薬品開発費の高騰と上市難易度UP
MR数は製薬会社の医薬品開発や収益性の影響を受けるので、国内市場の厳しさを反映している可能性があります。
【製薬MR 人口推移】内資・外資・CSO・卸別MR数推移
企業別(内資・外資・CSO・卸)にMR数の推移をご紹介します。
全体のMRと同様に、内資系製薬会社・外資系製薬会社ともに単年度のMR減少数は過去最大でした。(内資1,962人、外資1,610人)
こう思った方がおられるかもしれませんが、外資系の方が減少率は高いです。
さらに、本調査に回答している企業数は「内資系140社」「外資系44社」になりますので、単純に1社あたりで換算しても外資の方が削減のペースは早いことが推察されます。

卸MRは1社データが反映されているため参考値の認識でよいと思います。
最新データのチェックポイント
●内資MR数⇒31,501人(ピーク時より5,992人減少)
●外資MR数⇒18,101人(ピーク時より5,946人減少)
●CSO⇒3,923人(ピーク時より216人減少)
●卸⇒61人(ピーク時より602人減少)
MRの薬剤師免許保有者数とMR総数に対する薬剤師比率
薬剤師免許を保有するMRは5,276人で、前年度から279人増加しました。
また、全MRの中で薬剤師免許を保有するMRの比率は9.8%となりました。
本調査の中では5,000人を下回り、減少トレンドが続いていましたが、底打ち感が出てきましたね。
根拠のない個人的な感覚では、新卒採用で薬剤師免許保有者は10%以上を占めている印象を持っているので、今後は回復基調になるのではないかと推察しています。
薬剤師免許保有の有無が「不明」の回答は計上されていませんので、実際はもう少し多いかもしれません。
【参考情報】2007年~2016年の国内MR男女比推移

MRの男女比率は男性54,000人、女性9,000人前後で推移しています。
減少トレンドが大きいのは男性MRになります。
男女別のMR数調査は2016年度以降、公表されておりません。
個人的な推察ですが、新卒採用は男女比を均等にする流れが出ているので、男女比率は少しずつ差が縮小するのではないかと予想します。
また、製薬業界のトレンドとして就労環境も少しずつ男性偏重の文化が是正されてきているように感じます。
- 製薬会社における女性の就労環境整備(制度面)
- 産休育休後の復帰サポート・育児環境支援・女性管理職増加などが外資系企業から始まり、徐々に内資系企業体制を整えてきている状況です。
- ダイバーシティ&インクルージョンの浸透(D&I)
- 大手企業を中心にD&Iの考え方はかなり浸透し始めていると思います。
●ダイバーシティ⇒性別・国籍・価値観など様々なバックグラウンドを持つ人材を受容する。
●インクルージョン⇒多様な人々の個性や特性が活かされている。
優秀で尊敬できる女性MRの方をこれまで何人もお会いしてきましたので、性別だけで仕事の優劣を決めない流れは当然だと思います。
【MRの仕事】領域別MRの設置有無

領域制の有無は、55.3%の企業が「領域別は行わずに担当している」という結果でした。
領域制とは、「がん領域、糖尿病領域、眼科領域、免疫領域、皮膚領域、中枢精神領域、プライマリー領域」など、特定の製品群に特化して担当する方法です。
【領域制のメリット】
●製品領域が限定的になるので、勉強しやすく深く専門的知識を習得しやすい
●人気領域であれば、転職時にも経験者採用で有利(オンコロジーなど)
●顧客は診療科ごとに専門制となっているため、領域制との相性が良い
【領域制のデメリット】
●領域制は顧客数が限定的になるため、担当エリアが広域になることもある。
●知識が対象領域のみに偏ってしまう。
●不人気領域やニッチな領域だと転職時にニーズがなく不利になることもある。
MRに人気の領域
何といっても人気なのは「癌領域」の担当です。
この「人気」は、MRが希望するという意味だけでなく、転職市場でも比較的求人数の多い領域になります。
薬剤の市場トレンドから、生活習慣病などのプライマリー領域は人気に陰りが出始め、開発品目が今後も期待される癌領域(オンコロジー)が今の主流です。
他にも最近は「バイオ」「希少疾患」などの経験は転職市場で重宝されます。
【MR採用】新卒採用を行っている企業の比率

新卒採用ありの企業は49.8%で前年度よりも7.3%増加しました。
一方で、採用枠数は減らしている企業もあるため、最近入社した方からは「就活で苦労した」という声を聞くこともあります。
【MR転職】中途採用を行う企業数と前職内訳

中途採用を行った企業は調査回答企業のうち122社(60.1%)で実施していました。(前年度より8社減)
MR雇用規模別にみると、100名以上の企業では76社(78.4%)で前年より8社増加している一方で、MR雇用規模99名以下の企業では46社(43.4%)で前年度より16社減少しました。
こんな疑問をお持ちの方がおられると思いますので、前職のデータをご紹介します。
中途採用MRの前職内訳
①製薬他社のMR⇒92社(75.4%)
②コントラクトMR⇒64社(52.5%)
③他業界⇒34社(27.9%)
④特約店関係者(MS等)⇒26社(21.3%)

この結果は複数回答ありの結果です。
定年退職者のMR再雇用

近年は定年を迎えて退職というトレンドが変化し、働き続けることを希望する人も一定数おられます。
そこで、MR再雇用のデータを確認してみると以下の結果でした。
MR再雇用の概況
●再雇用した⇒108社(53.2%)
●定年を延長した⇒12社(5.9%)
※MR規模99名以下では「どちらも行っていない」が56社(52.8%)となっている
【医薬品卸MS 推移】2004年~2021年のMS数推移
MRと関係の深い医薬品卸の従業員総数とMS数をまとめました。
- 医薬品卸MSの従業員数:53,461人(前年から1,186人減少)
- 医薬品卸MSの総数:15,373人(前年から638人減少)
医薬品卸の従業員数は、2007~2009年と2017年に一時的な増加となりましたが、近年は減少トレンドです。
MSに絞って見てみると、2004年の調査開始以降は毎年減少しています。
卸経営の人件費削減は、日本医薬品卸売連連動会が公表している「卸経営の状況」からも数値で示されています。
近年の「販管費伸び率」「従業員数伸び率」「人件費率」に着目してみると、事業環境から利益率が低い中で費用を抑えて利益を確保するために人員へメスを入れる思惑が感じとれます。

医薬品卸の状況
●医薬品卸MSの総数は15,373人で、前年から638人減少
●医薬品卸MSの従業員数は53,461人で、前年から1,186人減少
まとめ
今回は、最新のMR白書2021のデータと医薬品卸MSデータからそれぞれ人口トレンドを解説しました。
この記事のポイント
●国内MRの総数は53,586人で、前年度から3,572人減少。
●単年度で3,572人の減少は過去最大
●薬剤師免許を保有するMRは5,276人で、前年度から279人増加(全体の9.8%)
●医薬品卸MSの従業員数は53,461人で、前年から1,186人減少
これからは「会社から残ってほしいと求められる人」と「淘汰される人」の2極化が進むと思います。
自分の目指す将来像に合わせて仕事や人生の計画を練っていく必要がありますね。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
引用データ元:MR認定センター MR白書アクセス(外部リンク)
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