近年はメタバースが大注目されています。
実際に、Facebookが社名をMetaに変更するなど、莫大な資金を投じてメタバースの開発競争が世界中で激化しています。
こんな疑問をお持ちの方もおられると思います。
そこでこの記事では、2022年3月30日に発売された「世界2.0 メタバースの歩き方と創り方」という話題の書籍を解説します!
著者の佐藤航陽さんはこの領域の黎明期から携わっている超スペシャリストです。
メタバースについて網羅的にまとめられた本著の中から「基礎知識」と「今後の潮流」を中心に解説します。
この記事の要点
●メタバースというのは、世界を創造するという「神の民主化」
●メタバースは「①コンピューターの性能②通信速度③3DCG技術」の3つの進化が相まった、インターネットの3次元化の革命
●メタバースは「ゲーム」が入口となって、新たな世界が広がる
●セカンドライフとは通信速度の環境が違う
●メタバース領域におけるNFTは、あってもいいがなくても成り立つ
●Web3.0やメタバースの潮流では、クリエイターが大きな力を持つ
●バズワードは「自分にプラスになるなら受け入れて活かす」思考が大切
●テクノロジーには「普遍的な法則性」がある
●メタバースが広がると、誰もが「自己実現」を達成しやすい未来がくる
メタバースとは「神の民主化」である
メタバースというのは、世界を創造するという「神の民主化」なのです。
これまで世界の宗教は「世界は神様が創造した」と信奉してきました。
世界を創造する能力を持つのは神様だけだったはずなのに、メタバースの登場によって現実とは別の「もう一つの世界」を万人に向けて開放するというイノベーションが今、起きているのです。
現実世界とは違う「もう一つの世界」が広がる未来はすぐそこに来ています!
メタバースについてさらに知識を深めていきましょう。
メタバース革命の本質はインターネットの3次元化
メタバースは「①コンピューターの性能」「②通信速度」「③3DCG技術」という3つの進化が相まった、インターネットの3次元化の革命です。
つまり、メタバース革命は単なるVR技術の革命ではないということです。
こう思った方向けにまずは用語を解説します。
VR:Virtual Reality(仮想現実)
頭にかぶるゴーグル型の端末や、ゴーグルを通して見る3次元バーチャル空間を指す。
3DCG
3D(3次元)とCG(Computer Graphics)を掛け合わせた造語。
コンピューター上で3次元のコンテンツを描写する「技術」そのものを指すことが大半。
VRゴーグルや体験型コンテンツなど用途が限定されておらず、出力されるインターフェイスやスクリーンが2次元でもOK。
VRはイメージできる人が多いと思います。
一方、あまり聞きなれない「3DCG」の技術は、ゲーム・アニメ・映画・ドラマなど身近なところですでに使われています。
「世界2.0」著者の佐藤さんは、「メタバースという言葉がVRと3DCGのちょうど中間の意味として使われていくと予想している」と言及されています。
つまり、メタバースは3DCGのように奥行きのある3次元のデータではあるが、出力される画面は2次元でも3次元でもよいバーチャル空間という意味です。
実際、メタバースで有名なFortniteはVR端末に対応していないPCやゲーム機で世界中の人が楽しんでいます。
「メタバース=VRのゴーグルが必要」というイメージは間違いです!
メタバースはゲームが入口となって広がっている
メタバースは「ゲーム」が入口となって、新たなコミュニケーションやビジネスが派生していきます。
実は、従来のインターネットの流れとは真逆のベクトルでビジネスが展開されるという点が新しいのです。
今は、無料で閲覧できるニュースやSNSでユーザー数を確保し、無料のゲームに誘導してオプション課金で利益を生む仕組みがトレンドです。
一方で、メタバースの代表例としてFortniteのビジネスを振り返ってみましょう。
アバター(自分の分身)用の服を毎年5,500億円売上げたり、米津玄師さんがバーチャルライブを開催したり、マイクを使って会話するなど、ゲームを入り口にして新しい世界が広がっています。
私の子供もFortniteを毎日やっていますが、自分が毎日服を着替えるような感覚でアバターの服もその日の気分に合わせて着替えたりしています。
- 従来⇒「ゲーム=利益を得るためのゴール」
- メタバース⇒「ゲーム=世界の入り口」
メタバースを考える時に、従来のビジネスモデルとは違う感覚を理解しなければ今後のトレンドを見誤ることにつながります。
現代のメタバースとセカンドライフの違いは通信速度
2003年にアメリカの企業がリリースしたメタバース「セカンドライフ」は、通信速度の遅さが一因となり、一世を風靡したものの廃れていく結末を迎えました。
4Gや5Gの高速回線がなかった時代に、精巧な設計でバーチャル空間をユーザーが自由にストレスなく楽しむことは不可能でした。
このような見解に対しては、「世界2.0」著者の佐藤さんはこのように言及されています。
時代を先取りしすぎたせいで、「セカンドライフ」はインフラにまで成長することなく廃れています。
この一事をもって「セカンドライフは悪い見本だ」と結論づけるのは早計です。
ー中略ー
もし「セカンドライフ」が今のタイミングでサービスをリリースしていれば、メタバース業界をいち早く席巻していたでしょう。登場するのがあと20年遅ければ、「セカンドライフ」は巨万の富を生み出していたはずです。
引用:世界2.0
実はセカンドライフは、ゲーム内で使える仮想通貨を作り出し、米ドルと交換できるサービスでマネタイズしていました。
発想に技術と時代が追いついていなかった事例と言えますね。
【メタバースとNFT】相性がよい可能性はあるが必須ではない
メタバース=NFTのような印象の記事や言説も多いですが、これは誤りであると「世界2.0」著者の佐藤さんは断言されています。(本著発行時点)
もちろん将来的にメタバースとNFTが融合する可能性は高いです。
しかし、2022年の段階ではメタバースとNFTの技術は全く別物であり、「相性が良いかも」という点が人一人歩きして混同されていることがあります。
こう思った方向けに、まずNFTについておさらいしてみましょう。
NFT(Non Fungible Token):非代替性トークン
オンライン上の画像・動画・音声などのデジタルデータを現実世界のトレーディングカードやグッズのように、「有限性」や「希少性」を持たせて売買したり流通させるための技術。
ブロックチェーン
取引の履歴を暗号技術によって、過去から1本の鎖のようにつなげる形式で記録する仕組み。
特定の誰かが情報を管理せず、それぞれが情報を保有し、常に同期が取られる「分散型台帳」という性質がある。
データの「破壊」「改ざん」が極めて難しい特徴を持つ。
従来、デジタルデータは無限にコピーできるので、グッズやアイテムを骨董品のように「レアもの」として希少価値を発揮させることが困難でした。
しかし「NFT=デジタル所有権」と例えられるように、ブロックチェーン技術の「改ざんが難しい」という特徴を利用して、デジタルデータにも唯一無二の希少性を与えてバーチャル空間にも物質の有限性を再現できる「NFT」が誕生したのです。
メタバースは「相互交流できる3次元バーチャル空間」程度の定義です。
ブロックチェーン上で動く必然性はなく、メタバース内の3DデータがNFT上で売買されたり流通したりする必要もないのです。
つまり、現時点でメタバース領域におけるNFTやブロックチェーン技術は「あってもいいけどなくても成り立つもの」と解説されています。
ただし、メタバースとNFTを融合させたDecentralandなどのプロジェクトが実績を出し始めているのも事実です。
Decentraland
3次元バーチャル空間内をアバターで動き回り、ゲーム内通貨が取引所で現実世界の価値と紐づいて売買され、デジタル空間上の土地やアイテムをNFTとして売買することができる生態系を実現している。
ゲームと現実世界がリンクして投機性を持つことから、仮想通貨界隈で注目が集まっています。
(投機を推奨しているわけではありません。)
今後のメタバースとNFTの予想として「世界2.0」著者の佐藤さんは以下のように言及されています。
個人的な予想としては、「Decentraland」や「The Sandbox」などの既存プラットフォーム上で簡単な3Dモデルを配置して、それらをNFTとして販売して儲けようとする「お手軽メタバース」プロジェクトはこれからも雨後のタケノコのように世界中で生まれ続けるでしょうが、独立したエンタメとしても成立するようなプロジェクトがNFTと融合して数億人単位のユーザーを獲得して世界的に普及するには、あと数年を要すると見ています。
引用:世界2.0
【メタバースとWeb3.0】クリエイターエコノミーが進む
Web3.0(ウェブスリー)やメタバースの潮流の中で最も恩恵を受けるのは間違いなくクリエイターです。
なぜなら、デジタルデータがNFTとして希少価値を発揮できるようになれば、デジタルデータをゼロから生み出せるクリエイターが大きな力を持つようになるからです。
Web3.0がピンと来ない方向けにおさらいしてみましょう。
3.0などのニュアンスは、ソフトウェアのバージョン管理に使われる表現です。
1.0⇒2.0⇒3.0と数字が上がるにつれて新しいバージョン(新しい概念が登場)というイメージでOKです。
Webの進化の過程を振り返ってみます。
- Webの変遷
- ●Web1.0⇒情報発信の民主化。誰でもインターネットで発信できる(一方通行)
●Web2.0⇒ネット上での情報発信がリアルタイム性と双方向性を持ち、GAFAMのような巨大プラットフォーマーの登場と中央集権化が進む。
●Web3.0⇒ブロックチェーン技術などを基盤とした非中央集権的なインターネット
インターネットの初期は通信環境が整っていなかったので個人がホームページで情報発信することが革新的でした。(Web1.0)
そこからPCやスマホの普及と通信環境の劇的な進歩で世界中の人とリアルタイムに双方向でコミュニケーションが可能になりました。(Web2.0)
Web2.0ではGAFAMをはじめとする巨大なプラットフォーマーが世界中のユーザー情報を管理・活用しながら加速度的に成長し、近年では特定のサービスやインフラに依存するリスクや弊害が指摘され始めました。
そこで、特定のプラットフォーマーが中央集権化するデータの主導権をユーザーに戻し、非中央集権的で分散的なインターネットを実現しようという流れが生まれ、ブロックチェーン技術の誕生によって盛り上がりを見せているのが現状です。(Web3)
ここまでの流れから、Web3.0は「クリエイターエコノミー」と言われています。
つまり、YouTubeなど特定のサービスを提供する企業に権限を握られずに、本当の意味でクリエイターが力を持つことになると期待されています。
Web3はポジショントーク感も強く、賛否分かれています。
メタバースは今が良いタイミング
メタバースは一般の人がピンときていない今だからこそ良いタイミングと言えます。
世間の反応はリトマス紙になります。
一部が熱狂していて、大衆が「?」という時はチャンスがあります。
実際に「世界2.0」著者の佐藤さんは、経験則という前置きで、このように語られています。
一部のギーク(技術オタク)が熱狂していて、それ以外の人がピンと来ていない・理解できないという状態が、取り掛かるタイミングとしてベストです。
テクノロジーは一部の熱狂者から徐々に外側の一般人へ波及していく傾向にあるので、熱狂者から一般の人に波が伝わる間に参入することができれば優位に立つことができます。
引用:世界2.0
バズワードに対する3つの思考パターン
バズワードに対して「自分にプラスになるなら新しいことを受け入れて活かしてみる」という思考パターンの人は得られることが大きくなります。
なぜなら、リスクを見極めた上で新しい潮流に乗っかってみるからこそ得られるリターンが存在するからです。
「AI」「ブロックチェーン」「仮想通貨」などバズワードに対して人間は3つの反応パターンを示します。
- バズワードに対する3つの反応パターン
- ①新たな世界観を拒絶する
②自分にプラスになるのであれば新しい潮流に乗っかってみる
③知識として把握しているが、冷めた目で遠くから様子を伺う
③の思考パターンは、最も後悔を残しやすいタイプです。
なぜなら、表面上は否定的ですが「もしかするとチャンスがあるかも?」と心のどこかで考えているので、変化が誰の目にも明らかになってから態度を一変させるからです。
しかし、「時すでに遅し」で②の人が利益を取った後の焼け野原にはチャンスが残っていないのです。
正直、私は③の傾向が強いので、書籍の解説を読んで心にグサッときました・・。
知識だけでなく「経験」も重要なので、リスクを見極めた上で新しい潮流に乗っかってみる思考を意識してみましょう。
テクノロジーの普遍的な法則性
未来そのものを予測することは困難ですが、コンピューターを軸としたテクノロジーを予測することは高い確率で可能です。
なぜなら、テクノロジーには「普遍的な法則性」があるからです。
この記事では以下3つについてポイントを解説します。
- テクノロジーの本質的な特徴
- テクノロジーが普及する過程
- テクノロジーが活用されていく順番
テクノロジーの本質的な特徴
テクノロジーには「人間を拡張」「人間を教育」「掌から宇宙」という3つの特徴があります。
この3点は、テクノロジーの未来を予測する上でとても大切な知識です。
特徴①人間を拡張
ヒトが個体ではできないことをテクノロジーの進歩で実現可能にする。
例)「コンピューター知能の拡張」「飛行機=行動の拡張」
特徴②人間を教育
新しいテクノロジーが社会に普及してしばらく経つと、今度は人間がテクノロジーに合わせて生活スタイルを変えていくようになる。
例)初期のコンピューター「人間の計算機能を拡張する存在」⇒現在のコンピューター「機械学習で最も効率的なアクションや解を人に教える存在」
特徴③掌から宇宙へ
テクノロジーの発達プロセスは体の近くから始まり、徐々に物理的に離れた空間で人間の能力を拡張していくように発展する。
例)鈍器・弓・草履⇒室内器具⇒自動車⇒飛行機⇒ロケット(手足から徐々に離れて宇宙へ向かう)
もし未来をイメージする時は、3つの特徴から切り口をイメージしてみるとよいでしょう。
テクノロジーが普及する過程
新しいテクノロジーは「過剰な期待」と「過剰な幻滅」が交互に起きながら普及していく法則があります。
近年ではブロックチェーン技術がイメージしやすいですね!
ブロックチェーン技術は、暗号資産で「億り人」の続出により世間が注目して過熱しました。
ところが、暗号資産価格の下落やハッキング等で批判的なメディア記事が増え、市場から撤退する人が続出しました。
しかし、ブロックチェーン技術は期待と幻滅を繰り返しながら、長期的に普及の方向に向かっています。
このように、テクノロジーの普及は150キロの猛スピードで曲がりくねった道をドライブするような感覚で人々を揺さぶりながら進んでいく特徴があるのです。
メタバースも今から「過剰な期待」へと向かった後に「幻滅」の時期が来るかもしれません。
しかし、長期的には前進していくので振り落とされないようにしていきたいと私は考えています。
テクノロジーが活用されていく順番
図解:消費者3~5年後に企業3~5年後に行政
テクノロジーは「消費者⇒企業⇒行政」の順番で活用されていく法則があります。
この順番の背景には、意思決定の身軽さが関係しています。
- 個人:面白いと思ったらすぐに手を出せる
- 企業:大企業になるほど関係者が増えて気軽に動きにくい
- 行政:行政職員や国民など関係者が多いので慎重に議論する
テクノロジーは社会の課題に応じて登場するので、次にどのようなテクノロジーが注目を集めるかは予測可能です。
しかし、「いつ」そのテクノロジーが来るかを正確に予測するのは難易度が高く、実社会での成功もタイミングが全てを握っているのです。
私達「個人」は身動きが取りやすい強みがあるので、世の中より「半歩」先回りして待っておく感覚をイメージしておくとちょうど良いですね。
メタバースで誰もが自己実現できる未来がくる
メタバースが広がると、誰もが「自己実現」を達成しやすい未来がくると期待されています。
外見・環境・能力など、現実社会では何らかの制約やコンプレックスで諦めていたことが、メタバースによって克服し自己実現につながる未来がくるのです。
アバターの世界では、顔・体系・性別・髪型など自由に自分が理想とする姿にすることが可能です。
例えば、私はサラリーマンなのでヒゲを生やしたり髪を染めることは難しいですが、アバターは自由に変えることができます。
他にも、国籍・性別・年齢など現実社会で我慢していることがメタバースでは自由に個性を発揮できます。
メタバースによってあらゆる制約を超越した自己実現ができる世界は、私達の人生をより豊かにしてくれる可能性を大いに秘めていると言えるでしょう。
そして、もしそのような未来が到来すると「人格の使い分け」というスキルが必要になります。
こう思われたかもしれませんが、ポジティブな面もあるのです。
- メタバースで人格を使い分ける利点
- ●身体に何らかの障害を抱える人もメタバース上では別の自分として生活できる
●才能豊かな子供がメタバース上では大人として接することで能力を拡大しやすくなる
Twitterも複数アカウントで現実社会とは別人格の人は存在します。
しかし、それはあくまで発言という一部のみの表現です。
メタバースでは、アバターが第二の自分として新しく切り開かれた世界で自己実現できる可能性があるのは大きな魅力ですね。
まとめ
この記事では「世界2.0」の中からメタバースの基礎知識と今後の潮流の部分を中心に解説しました。
まとめ
●メタバースというのは、世界を創造するという「神の民主化」
●メタバースは「①コンピューターの性能」「②通信速度」「③3DCG技術」の3つの進化が相まった、インターネットの3次元化の革命
●メタバースは「ゲーム」が入口となって、新たな世界が広がる
●セカンドライフとは通信速度の環境が違う
●メタバース領域におけるNFTは、あってもいいがなくても成り立つ
●Web3.0やメタバースの潮流では、クリエイターが大きな力を持つ
●バズワードは「自分にプラスになるなら受け入れて活かす」思考が大切
●テクノロジーには「普遍的な法則性」がある
●メタバースが広がると、誰もが「自己実現」を達成しやすい未来がくる
私の子供はFortniteの世界観が当たり前になっています。
ファミコン世代の私達には戸惑いがあるかもしれませんが、最初からメタバースがある環境の世代は「当たり前」の感覚がそもそも違います。
感覚の違いを理解し、新しい流れを受け入れて体験していくことが必要ですね。
この記事ではメタバースの基礎的な部分を解説しましたが、「新たな生態系の作り方」の章はこちらの記事で解説しています。
原著はこちらです。
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