生命保険の加入や見直しを検討する時に、こんな疑問が浮かびませんか?
そこでこの記事では、FP1級の渡邉さんに「生命保険の最適化」をテーマに解説していただきます!
最後には読者の方からの質問回答欄も用意していますのでお気軽にどうぞ!
株式会社AWARDの渡邉です。
今回は、メディ太さんから『生命保険の最適化について書いて欲しい!』とリクエストいただいたので、生命保険の最適化についてのわたしの考え方を書かせていただきますね。
この記事の結論
●保険の最適化方法①「必要な保障額を把握する」
●必要な保障額は「すぐ必要になるお金」と「継続的に必要なお金」を考える
●保険の最適化方法②公的保障や生命保険以外の収入を把握する
●「遺族年金」「死亡退職金」「遺された方の収入」を確認する
●必要な保障額から公的保障や収入を引いた金額を生命保険でカバーする
●目的に合った保険の種類を選択する
生命保険の最適化に大切な3つのステップ
わたし自身は生命保険の販売をしていませんが、家計見直し相談の中で生命保険の話はよく出てきます。
そこでよく感じるのが、ご自身にピッタリな生命保険のサイズ、つまり保障額について考えずに保険に加入を決めてしまっている方が多いのではないか?ということです。
これは、とても勿体ないことです。
先に結論から書きますと、以下の3ステップが生命保険の最適化の流れとなります。
- 生命保険を最適化する3つのステップ
- 【ステップ①】必要な保障額を把握する
【ステップ②】公的な保障や万が一の際に受け取れる生命保険以外のお金を把握する
【ステップ③】1から2を引いた金額を生命保険でカバーする
それぞれのステップごとに考え方を解説していきますね。
【ステップ①】必要な保障額を把握する
まずは「必要な保障額を把握する」ということから始めましょう。
必要な生命保険のサイズ(保障額)を考える上で、まず最初に考えるべきなのは、家族の誰かが万が一事故や病気で亡くなってしまった場合に、「どれくらいのお金が必要か?」ということです。
ここで考える「必要なお金」としては、次の2つに大きく分けることができます。
- すぐ必要になるお金
- 継続的に必要なお金
それぞれの具体的な金額や例を挙げながら確認していきましょう。
すぐ必要になるお金の考え方
すぐに必要なお金の例としては、「葬儀代」「お墓代」「相続税の支払い用のお金」「その他の身の回りの整理に必要なお金」などが挙げられます。
葬儀代は、全国平均で約200万円になるようです。
2020年3月に鎌倉新書(終活関連サービス事業をやっている会社です)によって実施された「第4回お葬式に関する全国調査(2020年)」によると次のような結果でした。
- 葬儀代の平均的な費用
- ●お葬式費用:平均119万円
●葬儀の飲食にかかった費用:平均31万円
●葬儀の返礼品にかかった費用:平均34万円
●寺・教会・神社などへのお布施:平均24万円
この調査によると、お墓代が平均で135万円となっていました。
ただし、お墓に関しては新たに購入する必要がある、という方は限られるのではないかと思います。
調査に対する回答人数も、葬儀に関する質問に対して10分の1ほどとなっており、9割程度のケースでは新たにお墓を購入する必要はなさそうです。
【すぐ必要になるお金】
●お墓の購入が必要でない人⇒約200万円必要
●お墓の購入が必要な人⇒約300万円必要
継続的に必要なお金の考え方
継続的に必要になるお金の方が、長い期間に渡って遺された家族を守るために必要なお金になるため大切と言えます。
「遺された家族の生活に必要なお金は、月々いくらくらいかかるか?」という視点を持ってみましょう。
それまでかかっていた生活費から、「亡くなった方がいなくなることで何が変化するか」を考えれば分かりやすいかと思います。
持ち家(住宅ローンあり)
団体信用生命保険に加入していればローンの支払いはなくなる。
しかし、固定資産税やマンションの修繕積立金・管理費は変わらず発生する。
賃貸
遺された家族が同じ家に住み続ける場合、同じ家賃がかかり続ける。
食費(細かな生活費)
「一人分かからなくなる」と計算しても良いですが、かなり細かい数字になるので、さほど気にしなくても良い。
そして、お子さんがいる世帯で忘れてはならないのが教育費です。
教育費はお子さんが歩む進路によって変化します。
- 幼稚園~大学まですべて公立に通った場合の教育費⇒1,043万円
- 幼稚園~大学まですべて私立に通った場合の教育費⇒2,547万円
引用:統計から見る「教育費」の目安(知るぽると、金融広報中央委員会)
そうなんです。
小さいお子さんがいらっしゃる場合は、まだまだ進路が確定していないことも多いでしょう。
教育費は余裕をもって備えておきたいところです。
このように、「①すぐ必要になるお金」「②継続的に必要なお金」を分けて考えてみると、どちらにおいても必要なお金が見えてくるのではないでしょうか。
【ステップ②】公的な保障や万が一の際に受け取れる生命保険以外のお金を把握する
ちょっと待ってください!
万が一の際には、公的な制度でも一定の助けになるものが用意されています。
国の制度や就業規則など、気付いていないだけで実は保障されていることが意外とありますよ。
そして、遺された方の収入も重要です。
国の制度として「遺族年金」と、その他のお金として「死亡退職金」「遺された方の収入」の考え方を解説します。
遺族年金はいくらもらえる?
遺族年金は、国民年金の被保険者の方であれば保障の対象です。
年金保険料をしっかり納めている方ならば、家族に遺すことができるお金になります。
遺族年金は、大きくわけると「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2つが存在しています。
名前を覚えなくても大丈夫ですよ!
「遺族にお金が支給される制度」と覚えておけばOKです。
遺族基礎年金
18歳までのお子さんの「人数」に応じて、支給額が決まります。
これは、国民年金から支給される遺族年金です。
例)ご夫婦のどちらかが亡くなってしまった場合の年間支給額
●お子さんの数が1人⇒約100万円/年
●お子さんの数が2人⇒約123万円/年
●お子さんの数が3人⇒約130万円/年
引用:遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)(日本年金機構)
遺族厚生年金
支払ってきた厚生年金保険料に応じて「配偶者」や「子ども」に支払われます。
また、妻の方は、一定の要件を満たすと年間約58万円の「中高齢寡婦加算」が遺族厚生年金に追加されることになります。
※一定の要件⇒ご自身が40歳以上65歳未満で、生計をともにしている子がいないこと。
遺族厚生年金は、「ねんきん定期便」などに掲載されている数字をみると、ある程度正確に計算することが可能です。
「ねんきん定期便」は毎年、誕生日月に届く年金記録ですよ。
ハガキで届いた記憶がありませんか?
万が一の際のことを考えるときには、公的な保障の部分はきちんと把握できていると良いでしょう。
死亡退職金と遺された方の収入
遺族年金の額を把握できたら、「死亡退職金」と「遺される方の収入」についても把握しておきましょう。
まず、まとまった金額として入ってくるのは、死亡退職金です。
死亡退職金
●会社員の方⇒就業規則などを確認し、支給額や条件を確認する。
●自営業の方⇒ご自身で用意してないと出ないお金。
ここまでは、万が一の際に「一時金」や「年金」として入ってくるお金について書いてきました。
しかし、こうしたお金だけではなく、遺された方の「働いて収入を得ること」も考える必要があります。
遺された方が働くことで月々得られる収入は、万が一の際にとても重要です。
この収入が大きい場合には、さほど保障がなかったとしても十分に生活が送れることもあるでしょう。
遺された妻の前年の年収が850万円以上だった場合は、遺族年金がもらえなくなることもあります。
公的な制度は、状況によって活用できるかどうかが変わってくることがありますので、その点も注意したいところです。
そうですね。
特に、遺族基礎年金はお子さんが18歳になる年度末まで受け取ることができます。
お子さんを育てるための資金としてはかなり重要な役割を果たします。
【ステップ③】1から2を引いた金額を生命保険でカバーする
必要な保障額と、万が一の際にあてになるお金について把握できたら、いよいよ生命保険の役割に入っていきます。
生命保険の最適化をおこなうためには、必要保障額から万が一の際にもらえるお金の差額を出してみると良いでしょう。
万が一の際にすぐに必要になるお金と、月々必要になるお金を計算して、それぞれに合う保険を組み立てていきます。
「終身保険」「定期保険」「収入保障保険」の3つを組み合わせると、万が一の保証として必要十分な備えができるかと思います。
それぞれの保険の特徴は下図にまとめてみました。
終身保険 | 定期保険 | 収入保障保険 | |
保障期間 | 保障が一生続く | 定めた期間中は 保障が続く | 契約期間中は 保障が続く |
特徴 | お金が貯まる機能も ついている | 掛け捨ての保険 | 万が一の際に、 月々の収入として 家族にお金をのこせる |
月払保険料 | 高め | 安め | かなり安い |
生命保険を作るシミュレーション方法
実際に生命保険を作るシミュレーションをしてみましょう。
今回は、誰でもネットで簡単にシミュレーション可能なオリックス生命の「保険料シミュレーション」を使ってご紹介させていただきます。
この記事で、オリックスの保険を紹介する意図はありません。
30歳男性、3600万円の死亡保障シミュレーション結果
終身保険 | 定期保険 | 収入保障保険 | |
保障期間 | 30歳から終身続く | 30-60歳まで | 30-60歳まで |
死亡保障 | 3,600万円 | 3,600万円 | 60歳になる年まで 毎月10万円が給付 (最大3,600万円) |
支払い期間 | 30-60歳 | 30-60歳 | 30-60歳 |
月払保険料 | 77,904円 | 7,560円 | 2,450円 |
保険の形によって、同じ保障額でもかなり月払保険料は異なりますよね。
ちなみに、終身保険はお金も貯まる仕組みになっています。
この表だけを見て「損得」を判断するのは、ちょっと早急すぎるかな、と思います。
保険は種類ごとに役割がある
保険には「種類ごとに役割がある」ということを認識しておくことが大切です。
- 保険の種類ごとの役割
- ●終身保険⇒死亡時に必ずかかるお金を保障したい人向き(葬儀代、相続対策)
●定期保険⇒期間を定めて保障を作りたい人向き(一時金として受取)
●収入保障保険⇒期間を定めて保障を作りたい人向き(月々で受取)
期間を定めて保障を作りたい場合には、「定期保険」や「収入保障」を活用すると、小さな掛け金で大きな保障を作れます。
万が一の際の「子育て資金の対策」や経営者の方の「借入金対策」などでは、この2つの保険が活躍します。
わたしは30代で子どももいるので、このタイプの保険に大きめに加入しています。
万が一の際に月々お金が出る収入保障保険は、とても心強い保険だと感じています。
一方で、死亡時に必ずかかるお金の保障には、終身保険が向いています。
葬儀代の備えや、相続対策では終身保険が活躍します。
- 相続対策における終身保険の役割
- ●特定の方に上手く資産をのこす
●相続税を支払うための資金を作る
特に相続対策においては、上記2点において、他の金融商品にない役割を果たせます。
「自宅を含む不動産が資産の大部分を占める方」や「中小企業のオーナーで資産の多くが自社株の方」などは、終身保険を利用して相続時の対策をするのが有効な場合が多いです。
自分に合った保険を探すには比較検討が大切
今回はオリックス生命が提供しているオンラインのシミュレーションを活用していますが、作りたい保障によってどの保険会社が優れているかなどは異なります。
なぜなら、同じタイプの保険でも保険会社によって保険料は異なるからです。
実際に加入する前には複数社を比較検討すると、より納得感のある保険に加入することができるのではと思います。
今では保険の窓口グループや、保険見直し本舗など複数の生命保険会社の乗り合い代理店さんも多くあります。
こうした乗り合い代理店さんでは、一人の担当の方から、複数社の生命保険にまとめて加入することもできますので、検討してみていただければと思います。
読者の方からいただいた質問
当記事の内容に関して3つの質問をいただきました。
渡邉さんからの回答を掲載します。
質問①ドル建て生命保険のメリット・デメリットは?
メリット・デメリットは下に記載した内容などでしょうか。
わたしも基本的にはお勧めしませんが「大きな終身保険を安い掛け金で作りたい」などのニーズであれば、絶対に必要ないというわけではありません。
ドル建て生命保険のメリット
●外貨建ての保障が作れる。
●外貨での積立が気軽に始められる。
●長くやると増えた分が一時所得になり無税で受け取れることが多い 。
●外貨建てで将来貯まる額を確定させることができる。
ドル建て生命保険のデメリット
●手数料が高い。
●掛け捨ての保険と他の積立投資を組み合わせた方が、効率よく将来のお金を作れる。
●外貨建てなので月々の支払い額が変動する。(今のような円安局面だと支払額増えて不安になりますよね)
●インフレに弱い。
質問②会社員は掛け捨ての「定期保険or収入保障保険」が良い?
はい、そう思います。
わたし自身は、長く続けている終身保険にも加入しているのですが、その保険に加入する前に今の知識があったら定期保険と収入保障のみで必要な保障は用意していたはずです。
ただし、定期保険or収入保障保険というよりは、「定期保険&収入保障保険」で考えるのがお勧めです。
2つの保険は一度にまとまった額を受け取るという用途の定期保険と、月々の収入を受け取るという収入保障保険で異なるからです。
ご自身の理想の形の保障を2つの保険の組み合わせで作ってみてはいかがでしょうか。
質問③終身保険や貯蓄型保険の継続と解約の判断基準は?
継続or解約の判断は、計算してみて決めると良いでしょう。
将来の解約返戻金などのデータは契約時にもらっているか、もらっていない場合でも保険会社に言えばもらえます。
その数字から、現在やめて他の手段を選択するのが良いかを決めましょう。
また、継続or解約の他に、『払済保険』『延長定期保険』といった保険に変更ができる場合もあります。
取れる選択肢を整理してから、ベストなものを選択してみてはいかがでしょうか。
難しい場合にはご相談いただければアドバイスさせていただきます。
まとめ
今回は生命保険の最適化について書かせていただきました。
この記事のまとめ
●保険の最適化方法①「必要な保障額を把握する」
●必要な保障額は「すぐ必要になるお金」と「継続的に必要なお金」を考える
●保険の最適化方法②公的保障や生命保険以外の収入を把握する
●「遺族年金」「死亡退職金」「遺された方の収入」を確認する
●必要な保障額から公的保障や収入を引いた金額を生命保険でカバーする
●目的に合った保険の種類を選択する
最適化した保険に入るには、けっこうプロセスを経なければいけないのがお分かりいただけたかと思います。
最近はネットなどでも安く保険に加入することができる時代ですが、保険を最適化できている方は意外と少ないようです。
自分でも加入している意味を明確に話せない保険に多数加入してらっしゃる方もいれば、お子さんがまだ小さいにも関わらず保障を用意していない方もいらっしゃいます。
保険は上手に使えば自分や周りを守るのに役立ちます。
ぜひ内容を見返してみて、保険の最適化に取り組んでみてください。
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