医療保険やがん保険の加入や見直しを検討する際、こんな疑問が浮かびませんか?
そこでこの記事では、FP1級の渡邉さんから「医療保険・がん保険の考え方」をテーマに解説していただきます!
最後には読者の方からの質問回答欄も用意していますのでお気軽にどうぞ!
株式会社AWARDの渡邉です。
今回は「医療保険とがん保険の考え方」について書いてほしい、とメディ太さんから依頼を受けました。
わたし自身は、現在がん保険に加入しており、過去には医療保険(入院などでお金がでるもの)にがん保険が特約としてついているものに加入していました。
この記事では、様々な種類がある医療保険やがん保険について取り上げてみたいと思います!
【結論】医療保険やがん保険の考え方
●公的な国民健康保険、健康保険でカバーしきれない部分を保障するために加入する
●十分な貯蓄があり、病気の際にそこから治療費等の支払いができるのであれば、加入しなくてもOK
●確率論や期待値の考え方でいえば、加入しない方が得。(支払う保険料のうち保険会社の経費につかわれる部分が多くあるため)
●「その保険に加入することで安心や満足が得られるか」の感覚が大切
医療保険やがん保険は必要?不要?
実際のところ、「医療保険」や「がん保険」に加入するべきかどうかというのは「どのくらい入院や手術やがんに対して備えたいか?」という個人の意向による部分が多いのではと感じています。
その意見は、保険の営業マンの方から聞くこともありますよ。
死亡保険と比べると保険金として設定する金額も小さいことが多いですし、十分な貯金がある方であれば「医療保険、がん保険には入らない」というのも一つの手かと思います。
その通りです。
冒頭で書いた通り、わたし自身は貯金が少なかったときには、入院とがんに同時に備えることができるような保険に加入していました。
今ではその保険は解約し、がんの治療費の実費が保険金としておりるタイプのがん保険のみに加入しています。
- 貯蓄と保険料の考え方
- ●貯蓄⇒貯めたお金は100%自分のお金として手元に残る。
●保険料支払い⇒「予期せぬ出来事」が起きた際、大きなお金を引き出せる権利を保険会社の経費込みで買っている。
保険料設定の仕組み
基本的に、保険はお金が必要になるような「出来事」が起きた際に、保険会社が保険金を支払えるように設計されていますので、保険会社自体が大きなリスクを負っています。
そのため、「出来事」の起きる確率が変化しても経営が成り立つよう、保険会社側で十分な利益がでるような保険料、つまり払い戻される額に対して保険料は高めに設定されていると考えるべきです。
確率論的には、保険に入っていた方が将来の手元のお金は小さくなることを知っておきましょう。
その代わり、備えていた「出来事」が起きた際には、保険に入っていたことで救われることもあるのです。
もう少し判断の目安はありませんか?
その気持ちはとても分かります。
むやみに加入するのではなく「自分が本当に必要だ」と感じることができる保険であれば、加入する価値があるのではないでしょうか。
みなさん自身で必要性を判断できるようになるための基礎知識として、「保険の効果」「実際にかかる医療費」「がん保険と医療保険の考え方」を順に解説していきますね。
医療保険やがん保険の加入で得られる効果は?
さて、医療保険やがん保険では、加入によってどのような「効果」が得られるのでしょうか。
そうです!
保険に加入した後、対象疾病の罹患・入院・治療によって受け取れる、金銭的保障などのことです。
- 医療保険の効果(代表例)
- ●入院した際に1日あたり5,000~10,000円がもらえる。
●手術した際には5~20万円がもらえる。
- がん保険の効果(代表例)
- ●がんになったことが判明した際に50~200万円がもらえる。
●がんによる入院や通院で1日あたり5,000~10,000円がもらえる。
●がんに対する手術や放射線治療の際に5~20万円がもらえる
保険には無数の種類がありますので、全てが上記の内容とは限りません。
もちろん「すでに医療保険やがん保険に入っている」という方は、ご自身の保険にどんな効果があるのかを知っておくことも大切だと思います。
実際の医療費は極端に高額な費用がかからないケースが多い
医療保険やがん保険は、入院・手術・がんの治療などで「大きなお金がかかること」に備えるためにあるわけです。
では実際に、病気やけがの際の医療費はどのくらいかかると思いますか?
入院するような病気だと、大きな金額がかかるイメージですかね~。
そのような印象がありますよね。
実は、日本では公的な医療保険が充実しているので、極端に高額な治療費はかからない場合が多いのです。
- 自己負担を減らしてくれる制度
- ①国民皆保険制度⇒公的な制度
②高額療養費制度⇒公的な制度
③付加給付⇒企業独自の制度
まず、ほとんどの方が病気やケガで病院に行った際に体験していると思いますが、実際にかかった医療費に対して私たちが負担する額は小さくなります。
教えてください!
わかりました!
1つずつポイントを解説しますね。
【国民皆保険制度】医療費は1割~3割負担で済む仕組み
まず、日本には「国民皆保険制度」があります。
誰しもが公的な健康保険に加入していることで、自己負担が小さくなるようになっているのです。
公的な健康保険の種類
「被用者保険」…主に会社勤めの人とその家族が対象
「国民健康保険」…75歳未満の自営業者と家族が対象
「後期高齢者医療制度」…75歳以上の人が対象
こうした保険に加入している方には「健康保険証」が配布されています。
医療機関を受診した時に、病院や薬局の窓口に提示することで医療費の自己負担額が小さくなるのです。
じゃあ、私はすでに国の用意している保険に加入済ということですか?
そうですね。
「保険証」を持っている方は、その時点で公的な医療保険には加入しているわけです。
医療費の負担額は年齢によって変わると聞いたことがあるのですが本当ですか?
その通りです。
医療費の負担割合は年齢や所得によって変わります。
医療費の負担割合は年齢や所得によって変わります。
医療費の負担割合
「6歳未満」…義務教育就学前の6歳未満の人は2割負担
「6歳から70歳未満」…所得に限らず3割負担
「70歳~75歳未満」…70歳になると「健康保険高齢受給者証」が交付され、それを健康保険証と一緒に医療機関の窓口に提出すると2割負担
「75歳以上」…75歳になると後期高齢者医療制度に移行し「後期高齢者医療被保険証」が交付され、これを健康保険証と共に医療機関や薬局の窓口に提出すると1割負担
①自己負担が2割に下がる仕組みは平成26年度から始まったため、平成26年4月1日までに70歳に達している場合は、それ以前の制度の内容が適用され1割負担となる。
②70歳以上でも、年収約370万円を超える所得がある場合は「現役並み所得者」として、70歳未満同様3割負担のままとなる。
これらが公的医療保険によって私たちが実際に負担することになる医療費の割合となります。
きっとそれは、お住いの自治体が独自に行っている仕組みです。
未就学児や高校生までの子供に対して、自治体が補助を出し医療費を無料化している場合もありますね。
これだけでも、医療費に関する心配はかなり減りますよね。
【高額療養費制度】月あたりの負担額に上限がある
特に大きな医療費がかかったときに助けになるのが、高額療養費制度です。
こちらは公的な国民健康保険や健康保険に加入している方であれば誰でも適用されます。
厚生労働省のホームページに制度を解説する資料が掲載されていますよ。
69歳以下の方の高額療養費制度を適用した際の自己負担額を計算する計算式について記載しておきますね。
年収約370~約770万円の方が、1ヵ月間に100万円の医療費がかかった場合の計算をしてみましょう。
高額療養費の計算例
80,100円+(医療費-267,000円)×1%
この医療費の部分に1,000,000円を入れてみると、
80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%
=80,100円+733,000円×1%
=80,100円+7,330円
=87,430円
そうなんです。
3割負担だと30万円かかるところが、高額療養費制度の利用で自己負担は3分の1にまで減ります。
いざというときには大きな助けになりますよね。
1ヵ月に100万円の治療費がかかった場合で計算しますね。
年収が約770~約1160万円の方は自己負担額が約17万円/月です。
年収が約1160万円以上の方は自己負担額が約25万円/月です。
年収によって差があるのも知っておきたいところですね。
【付加給付】利用できると負担額はさらに軽減
大企業の被用者保険に加入している方の場合、「付加給付」も利用できることの多い制度です。
付加給付とは、ご加入の健康保険組合等が独自で行っている給付のことです。
おおむね、1ヶ月の間に1つの医療機関で高額な医療費がかかった場合、高額療養費の限度額には達していなくても、健康保険が定める限度額に達していれば、それを超えた金額が給付されます。
ピンとこないです・・。
例えば、国内製薬会社の武田薬品工業の付加給付を見てみましょう。
武田薬品工業健康保険組合に入っている方は、独自の付加給付で20,000円を超えた自己負担額分に関して還付される仕組みになっています。(所得区分あり)
例えば自己負担額が50,000円の治療を行った場合、50,000円-20,000円=30,000円が戻ってくる、ということですね。
他にもホームページを見る限りでは、付加給付として様々な保障が独自で設計されています。
私の会社の付加給付を調べるにはどうすればいいですか?
加入している『健康保険組合の名称+付加給付』などで検索をして調べてみてください!
ご自身が入っている健康保険は、保険証を見ればわかりますよ。
この付加給付は「健康保険組合が独自に定めているもの」なので、なくなることなどもあります。
ここ10年ほどの間に「付加給付を廃止した」という大企業の話もいくつも耳にしていますので、現在は付加給付があった場合でもあてにし過ぎるのは危険かもしれません。
民間保険の価値「医療保険が必要かどうかの考え方」
さて、このように日本では公的な健康保険がかなり充実しています。
「高額療養費制度や付加給付でカバーできないところをいかに民間保険でカバーするか?」という点が、民間の保険会社で入ることができる医療保険やがん保険の価値と言えます。
繰り返しですが、付加給付をあてにはし過ぎないでくださいね!
例えば、入院した際に公的な医療保険を使用することを想定してみましょう。
入院時の差額ベッド代、食事代などは医療費に加えて追加でかかる部分になります。
《30日間入院した場合》
①医療費(1日あたり約3,000円:高額療養費を利用して30日間で9万円想定)
②差額ベッド代(平均1日あたり約6,500円)
③食事代(1日あたり約1,500円:自己負担額1食460円×3)
①+②+③=11,000円(1日あたりにかかる費用)
※厚生労働省が公表している「主な選定療養に係る報告状況」の資料の令和元年7月1日統計より
出費になりますね~。
医療保険は入院した際に1日あたり5,000~10,000円程度の保険金がおりるものを選択している方が多いです。
もし長期入院した場合には、入院費のカバーに役立つのがイメージできるのではないでしょうか。
ちなみに、生命保険文化センターの調査によると、直近の入院時の自己負担費用の平均は20.8万円となっているとのことです。
短期入院の場合には「1日あたり○○円」というタイプの医療保険はあまり役に立たないことになります。
商品によっては、「入院した時点で、まとまった金額の保険金がおりるタイプ」の医療保険もありますので、そちらが好みに合うという方もいらっしゃるかもしれませんね。
民間保険の価値「がん保険が必要かどうかの考え方」
医療保険とは別で語られることが多いのが「がん保険」です。
がんと言えども、他の病気と変わらず公的な健康保険の対象になります。
「どのくらいの範囲で備えたいのか?」を明確にして加入するのが良いですね。
がんに対して怖いイメージを持っている方は多いです。
「ご親族や知り合いの方ががんになった」という方も、もちろん多数いらっしゃいます。
このようなデータ等から「がんに特化して備えたい」というニーズに合わせてがん保険は生まれてきたのでしょう。
- 一般的な「がん保険」の契約内容(例)
- ●がんによる入院給付金の支払日数が無期限
●がんと診断されたときには、診断給付金を受け取れる契約の場合もある
「がんで死亡したときにはがん死亡保険金」を「がん以外で死亡したときは死亡保険金(給付金)」を受け取れるものもあります。
しかし、これらの金額は少額ですので、基本的には他の生命保険で備えた方が良いでしょう。
契約日から90日または3か月などの「待ち期間」があるのも特徴です。
この期間中に「がん」と診断されても保障の対象とならず、契約は無効となります。
見直しの際などには、すぐに前の保険をやめてしまうと保障のない空白期間ができてしまうので、注意しましょう。
さて、こうしたがん保険ですが、損保系の会社からは実際に治療費としてかかった金額を保障してくれる小さい保険料で入れるタイプの商品も出ています。
繰り返しになりますが、「どのくらいの範囲で備えたいのか」を明確にイメージしてみましょう。
読者の方からの質問
読者の方から、この記事に関連する質問をTwitterで募集しています!
今回は2つの質問をいただいたので渡邉さんから回答します。
質問①付加給付と貯蓄でOKと考えているけど大丈夫?
100万円前後の貯蓄を確保して、あとは保険に加入せず貯蓄や投資に回そうと考えているのですが、このプランに対してアドバイスをいただけませんか?
自己負担上限20,000円はかなり良いですね。
付加給付は他の業界と比較しても製薬会社はかなり恵まれている印象があります。
100万円前後の貯蓄を確保して、貯蓄や投資、大きな問題はありません。
ただし、入院や通院などの際には医療費以外の出費もあります。
本内容でも書きましたが、差額ベッド代、食事代などですね。
もちろん交通費や外食費なども病気になることで多くかかる可能性もあるでしょう。
貯蓄や投資をしている部分は、出費が発生した際にすぐに取り崩せるものが良いかと思います。
投資信託などは大体1週間くらいあれば現金化できます。
個人向け国債などは、1年間は引き出すことができなくなります。
貯蓄や投資と一口に言っても、商品特性などをよく理解して自分に合ったものを選ぶのがお勧めです。
質問②武田薬品工業の付加給付がある場合、渡邉さんは保険をどのように選ぶか?
わたし自身は流動性の高い(=現金にしやすい)資産が500万円くらいあれば、医療保険やがん保険には入らなくて良いかな、という風に判断しそうです。
ただ、付加給付が今あったとしても後々制度がなくなる可能性はありますし、一度病気をしたら保険には入りにくくなるので、もう今後の人生では必要ないと思えるまでは保険は加入し続けるかと思います。
今後、結婚や家の購入など大きなライフイベントが控えている方は、そのあたりも考慮してみてはいかがでしょう。お金は使えばなくなります。ちょうどお金を使ってしまったタイミングで、病気や怪我をしてお金に困る可能性もありますよね。
また、いざというときに家族からの支援が受けられるか、というのも判断材料になります。
家族の資産状況や関係性次第では、本当に困ったときにはお金の面で頼ることもできるのではないでしょうか。
実は家族との良好な人間関係が、いざというときには民間の保険以上に頼りになる、というのも合わせてお伝えしたいところです。参考になさってみてください。
【まとめ】その保険に加入することで安心が得られるか?
ここまで解説した考え方をベースに、「医療保険やがん保険への加入によって自分が安心できるかどうか」が大切だと感じます。
【まとめ】医療保険やがん保険の考え方
●公的な国民健康保険、健康保険でカバーしきれない部分を保障するために加入する
●十分な貯蓄があり、病気の際にそこから治療費等の支払いができるのであれば、加入しなくてもOK
●確率論や期待値の考え方でいえば、加入しない方が得。(支払う保険料のうち保険会社の経費につかわれる部分が多くあるため)
●「その保険に加入することで安心や満足が得られるか」の感覚が大切
貯蓄がたくさんある方であれば、特に保険に加入しなくても公的な医療保険だけで十分に治療費や入院時の負担はまかなえます。
しかし、そういった方でも「なにも保険に加入しないのは不安・・。」という方もいるでしょう。
全体像を知った上で、「現在の保険が合っているか」「今後どんな医療保険やがん保険へ加入するか」を考えていただけると良いのではないでしょうか。
本日も最後までご覧いただきありがとうございました!
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