YouTubeや書籍をきっかけに、株式投資を始める方が少しずつ増えてきていますね。
「余裕資金」を生み出して将来に備えるという方法は良い選択肢の1つです。
これから投資を考えようと思った時に、こんな疑問が浮かびませんか?
そこで、「FP1級」と「日本証券アナリスト協会認定プライマリー・プライベートバンカー」の資格を持つ渡邉さんから、MR向けに株式投資を始める方法を解説していただきます!
株式会社AWARDの渡邉です。
今回は『インデックス投資の基礎知識』というテーマで書かせていただきます。
個人的には投資が一番お金の話の中でもワクワクしますし、楽しいところですので、魅力が少しでも伝われば嬉しいです。
この記事の結論
●投資初心者の方は、株式投資から始めるのがおすすめ。
●株式投資は、投資信託からスタートするとリスクが小さい。
●投資信託はインデックスファンド(パッシブ)を選択する
●インデックスファンドを運用するなら税制優遇制度をフル活用しましょう。
●自分のリスク許容度に合った運用額を決めるコツは、最大の損失を「投資額の3分の1」と仮定すること
初めて投資する人は、株式投資がおすすめ!
投資初心者さんから「投資は何から始めるべきか?」と相談されたら、まずは株式投資をおすすめします。
なぜ株式投資をおすすめするかという理由には複数ありますが、主に次の3つが挙げられます。
- 投資初心者の方に株式投資をおすすめする理由
- ①長期的に考えると利益が出る可能性が非常に高い
②流動性(換金性)に優れている=売りたいときにいつでも売れる
③少額から始められる(100円でも投資が可能)
株式投資って毎日株価を見たり、大損する人のイメージがありますよ?
たしかにそのようなイメージをお持ちの方は多いのですが、株式投資は正しい知識を持って取り組めば「むしろ、損をすることの方が少ない投資」なのです。
実際に、日本の株式市場は1878年に誕生して以来、144年間で配当の再投資効果も含めると584万倍に上昇したことが明治大学の研究で明らかになっています。(引用:日本経済新聞)
他にも、日本の株式の代表的な指数である”日経平均株価“という指数をご存じでしょうか。
日経平均株価
日経新聞社が選んだ225社の株価の平均を取っている日本を代表する株価指数。
※2022年8月1日時点の値は27,993.35円。(約28,000円)
この日経平均株価、戦後の1949年5月16日にスタートしているのですが、当時の値はいくらだったと思いますか?
なんと、176円21銭からスタートしているのです。
1949年5月から2022年8月までの73年間で、実に159倍になっているわけです。
しかも、こちらの数字には株式を保有している際に得られる配当は含まれていません。
では、米国株も確認してみましょう。
米国株式の代表的な指数に”S&P500“というものがあります。
S&P500
米国を代表する500社の株価の平均をとった指数。
※2022年8月1日時点の値は4118.63ポイント
S&P500の算出が始まったのは1957年3月4日。そのときの値は44.06ポイントでした。
1957年3月から2022年8月までの65年間で、93倍以上になっています。
こちらも配当などは含まない値です。
このように長期で見ると、株式で利益が出るイメージがでてきませんか?
実際のところ、米国株へ投資を行った場合「15年以上保有していたら、1950~2017年間のどこの区間で切り取ってもプラスのリターンになる」というデータもあります。
「50年以上という期間は長すぎて参考にならない」と思った方でも、15年後なら想像できるのではないかと思います。
おすすめの理由2つめの「流動性」はどのような意味でしょうか?
流動性の観点では、上場している株式なら基本的には市場が開いているタイミングであればいつでも現金に換えることができます。
本当に困ったことがあれば「すぐに売却して現金にできる」というのは、投資をする上でかなり魅力的な特徴と言えます。
お金というのは画面上にあっても使えなければ意味がありません。
「使いたいときに使える」というのはお金の大切な価値な一つなのです。
おすすめの理由3つめの「少額から始められる」という点も教えてください!
株式投資というと「数十万円、数百万円というお金が必要なのではないか?」と思ってらっしゃる方もいるのですが、実は指数への投資であれば100円から始めることができます。
また、最近は個別株でも小さい単位で売買ができる証券会社が増えてきています。
小さい単位で売買ができる証券会社
●1株から株を購入できるSBI証券
●人気のスマホ証券であるLINE証券
●1000円から個別株投資ができるPayPay証券
こうしたサービスが投資へのハードルを下げてくれています。
「投資にまずは慣れていきたい」という方は、数百円、数千円という金額から始めることも可能になっているのです。
これから投資を始める方は、ネット証券最大手で1株から株を保有できるSBI証券がおすすめです。
個別株と投資信託のどっちにするか迷ったなら投資信託がおすすめ!
「個別株と投資信託のどちらから始めた方がいいの?」と疑問に思った投資初心者の方は、投資信託がおすすめです。
なぜなら、個別株への投資と比較して、投資信託への投資はかなりリスクが小さいという特徴があるからです。
個別株とは?
個別株とは、武田薬品工業、第一三共、トヨタ自動車、アップルなど、1企業の株式のことを指します。
投資信託とは?
投資信託というのは、多くの投資家から集めた資金で、様々な企業の株式を購入し、その利益がお金を出している投資家に分配される商品のことを指します。
※株式以外に”不動産””金””債券”などに投資する投資信託もあります。
投資信託の方が「リスクが小さい」ということをもう少し具体例で教えてもらえませんか?
例えば、1つの個別株(1社)へ集中的に投資をしたとして、もしその会社が倒産したらどうなりますか?
正解です!
倒産しまえば、投資家はすべての資金を失ってしまいます。
一方で、投資信託は数十社~数千社といった株式がまとまっているので、もしその中の1社が倒産した場合にどのようになると思いますか?
大正解です!
複数の企業の株式でリスクヘッジすることで、1社だけの影響はかなり小さく抑えられています。
『卵を一つのかごに盛るな』といった投資の格言で表現されることもあります。
個別株に比べると投資信託は価格の変動もかなり小さく抑えられますので、比較的安心して持てる資産です。
株式の投資信託はインデックスファンドがおすすめ!
投資信託を大きく2つに分類すると、パッシブファンド(インデックスファンド)とアクティブファンドに分けられます。
初めて投資を行う方は、まずインデックスファンドを選択することをおすすめします。
パッシブファンド (インデックスファンド) | アクティブファンド | |
運用方針 | 株価指数に連動する成績を目指す | 株価指数を上回る成績を目指す |
手数料 | 安い | 高い |
たしかにこれだけ見ると、アクティブファンドの方が優れた投資信託のように思いますよね。
しかし、実際には様々なデータで、長期の運用になればなるほどアクティブファンドよりもインデックスファンドの方が運用成績は上回っていることが明らかになっています。
実際、「米国で1970年に存在したアクティブファンドのうち、2016年時点で明確に市場の平均と同等以上の成績を残したファンドは12.7%程度しかなかった」というデータもあります。
これには様々な要因がありますが、アクティブファンドの手数料がインデックスファンドに比べて高いのが一番大きなポイントでしょう。
アクティブファンドはパッシブファンドに比べると手数料が高い傾向にあるのですが、”その手数料を上回る成績を毎年残せる運用担当者がほとんどいない“という事実があります。
そのため、「長期で見るとほとんどのアクティブファンドがインデックスファンドに負けてしまう」という結果になるのです。
もちろん、良い成績を残すアクティブファンドがないわけではありませんが、初めて投資を行う、という方はまずインデックスファンドを選択すると良いかと思います。
【インデックス投資の始め方】税制優遇制度を利用する
では、次に「インデックスファンドをどこで買うか?」という点について考えていきましょう。
まずは「つみたてNISA」「確定拠出年金」「iDeCo」などの国が用意している税制優遇制度を利用する方法がおすすめです。
前回記事に続いて、年収700万円で製薬会社勤務の佐藤さんを例にして考えていきましょう!
モデルケース(佐藤MR)
・佐藤さん→職業は製薬会社のMR、35歳、年収700万円
・奥様→30歳の専業主婦
・子供→5歳の男の子
・世帯年収700万円
・世帯貯蓄1000万円
佐藤MRの場合、適切な貯蓄を行うことができれば、毎年100万円程度を貯めることができます。(詳細は前回の記事をご覧ください。)
年収700万円の佐藤MRが貯蓄可能な年100万円のうち、「30万円を預貯金」「70万円を投資」に分ける方法を考えてみます。
この額を投資するときに、まず最初に活用したいのが『つみたてNISA』という制度です。
年間40万円までを金融庁が厳選した投資信託等に非課税で投資することができます。
つみたてNISAの口座は銀行や証券会社などで開設することができます。
今から口座開設するなら、おすすめはSBI証券や楽天証券といった大手のネット証券です。
年間40万円まで非課税で20年間運用ができますので、仮にこの枠をすべて使ったとすると800万円を20年間で投資に回すことが可能です。
20年間毎年40万円の投資を継続できた場合、年間4%のリターンが出た場合は約1223万円になります。
過去30年間の世界株式の平均リターンが年間8.1%ですから、4%の想定は決して非現実的なリターンではないかと思います。
投資で利益が出た場合、通常は税金がかかってきますが、つみたてNISA内で投資商品を購入して出た利益に対しては税金がかかりません。
国が用意している税制優遇制度ですから、積極的に使っていくことをお勧めします。
年間40万円を運用したとして、佐藤さんの場合あと30万円の投資資金はどうすればいいですか?
佐藤MRのケースでは、次の2つのどちらかの方法が選択肢になります。
・奥様のつみたてNISAを開設して、同様の投資を行う
・確定拠出年金を活用する
製薬会社にお勤めの方の場合は、企業型確定拠出年金に加入している場合があると思います。
企業型確定拠出年金はとても大きなメリットのある制度です。
60歳まで使わないでよいお金として納得できるのであれば、ぜひ活用していきましょう。
企業型確定拠出年金のメリット
●拠出額をすべて所得控除できる(毎年の所得税・住民税が減る)
●運用益に対して非課税
●受取時に税制優遇がある
企業型確定拠出年金のデメリット
●60歳までお金が引き出せない
●会社が用意した投資商品の中からしか選べない
その場合はどうすればいいですか?
企業型確定拠出年金に加入していない(加入できない)方は、ご自身でiDeCo(個人型確定拠出年金)をスタートしてみてはいかがですか?
SBI証券や楽天証券でiDeCoを開設して加入すればOKです。
また、次の状況に当てはまる方は、証券会社の”特定口座“で積立投資するのもよいでしょう。(支払う税金を証券会社が計算してくれる口座)
- 特定口座で積立投資が選択肢になる人
- ●60歳まで使わないお金にできるか分からない
●子育て資金の目途が立っていない
●家を購入する際に大きな資金を使う可能性がある
税金がかからないことにこだわるよりは、自分自身のライフプランに合わせた投資をすることを最優先していただきたいと思います。
あなたにとってピッタリな運用額は?
つみたてNISAや確定拠出年金も活用した投資のイメージはだいぶ湧いてきたのではないかと思います。
株式投資は楽勝です!
ちょっと待ってください!
投資を始める際に必ず付き合わなくてはならない価格変動のリスクについても知っておく必要があります。
インデックスファンドはリスクが小さいのでは?
インデックスファンドは個別株に比べればリスクの小さな投資対象です。
しかし、それでも数年に一回は大きな価格変動が起こります。
例えば、2020年3月のコロナショック(新型コロナウイルスの感染拡大時の株価の暴落)では、日経平均株価もS&P500も30%を超えて下落しました。
そうですね。
例えば、佐藤MRが保有する1000万円の貯金を全てインデックスファンドの投資にまわした状況でリーマンショックが発生したら、「一時的に700万円以下の資産額になってしまった」ということです。
繰り返しますが、株式投資は長期的には報われる投資です。
戦後だけでも、様々な出来事(株価暴落)はありましたが、どれも乗り越えながら株式は投資家に対して利益をもたらしてきました。
- オイルショック(1973年)
- ブラックマンデー(1987年)
- 日本のバブル崩壊(1991年)
- アジア通貨危機(1997年)
- ITバブル崩壊(2000年)
- リーマンショック(2008年)
- 東日本大震災(2011年)
- 新型コロナウイルスの感染拡大(2020年)
インデックスファンドを長期的に保有していれば、一時的に株価が下落していたとしても回復する可能性は非常に高いでしょう。
一時的な株価下落でも、不安になってしまって耐えられなかったらどうしよう・・。
そうした場合は、「一時的な損失をいくらまでなら許容ができるか?」という視点で、インデックスファンドを購入する額を決めると合理的なのではないでしょうか。
インデックスファンドに投資している場合の最大の損失を「投資額の3分の1」と仮定してみましょう。(2020年のコロナショックがそのくらいの下落幅でした)
そうすると、100万円までの損失に耐えられるという方ならば、投資可能額は100万円÷1/3=300万円ということになります。
200万円の損失に耐えられるという方であれば、200万円÷1/3=600万円が投資可能額になります。
つまり、一時的な損失に対する許容額の3倍を最大の投資可能額として考えておけば、ある程度の下落がきても心理的に耐えられる状態で投資が行えるのではないでしょうか。
この損失許容額が大きければ大きいほど、将来の資産額は大きくなる可能性が高くなります。
前回の記事では、佐藤MRが生活防衛資金以外をすべて投資に回した計算を紹介しました。
佐藤MR(年収700万)の余裕資金を投資に回した試算
①《一括投資》910万円を年利4%で25年間運用⇒約2426万円
※試算:資産形成シミュレーター(金融庁)
②《積立投資》月々8万3千円を年利4%で25年間積立⇒約4267万円
※資産運用シミュレーション(金融庁)
③貯蓄の余裕資金と収入の余裕資金を長期運用した額を合計(①+②)すると、2426万円+4267万円=6693万円
※生活防衛資金の90万円をキープしていたとしたら6783万円が25年後の資産
先ほどの損失に対する許容額が自分の場合はいくらかを検討しながら投資額は決定してみてください。
つみたてNISAなどは少しずつお金を投資に回していくことになるので、心理的な負荷が小さい状態で投資額を増やしていけるかと思います。
読者の方からの質問
読者の方から、この記事に関連する質問をTwitterで募集しています!
今回は4つの質問をいただいたので渡邉さんから回答します。
【質問①】インデックスファンドは全世界・先進国・米国のどれを好む?
わたし自身は「全世界」を好みます。
投資先の分散のされ方が「全世界>先進国>米国」の順に幅広いからです。
新興国には期待できないと思うから先進国が良い、米国が世界の成長を先導すると思うから米国が良い、など強い気持ちがある方はそちらでも問題はないです。
ただ、つみたてNISAのように20年後などまで投資をすることを考えると、今成長している国だけでなくて、できるだけ分散しておく方がリスクも低く、様々な未来のパターンに対応できるのではと考えています。
【質問②】日本株のポテンシャルをどのように考えていますか?
渡邉さんは日本株のポテンシャルをどのように考えていますか?
実はバブルのときが極端に高い株価がついてしまっていただけで、そこを除くと日本株の成長も右肩上がりになっています。
現在の日本株は、企業の出している利益に対して極端に割高ではないので、投資対象としては十分に魅力があります。
ただし、世界における日本の株式市場の割合はほんの数%です。
世界中を投資対象として考えたときに「日本株の割合が50%を超えている」といった分散の仕方はやや偏りがあるかもしれませんね。
【質問③】企業型確定拠出年金よりもつみたてNISAを優先する利点と欠点は?
この方法のメリットデメリットを補足説明してもらえませんか?
奥様のつみたてNISAを優先するのも全く問題ありません。
確定拠出年金よりつみたてNISAを優先するメリットは「流動性が高くすべての資産をいつでも取り崩せること」です。
デメリットは「確定拠出年金を利用するよりも、最終的に形成できる資産額は少なくなる可能性が高いこと」です。
“60歳まで資産が出せないことに不安を感じる”といった方は、つみたてNISAを優先するのも良いですね。
お子さんがいらっしゃる方は、今年と来年(2022年と2023年)しか新たな投資はできませんが、ジュニアNISAを利用するのも良いでしょう。
【質問④】現金と株式以外の資産を検討するタイミングは?
株式以外の資産を検討するタイミングは、どんな目的で投資を行うかによって異なります。
今回書いた内容は、どちらかと言うと「未来のための投資」であって、「今の生活を豊かにする投資」についての内容ではありません。
老後の生活費や教育費の形成ではなく、今の生活を豊かにしたいという方は、早い段階で仮想通貨、FX、不動産など他の資産形成の手段に目を向けても良いかと思います。
ただし、株式への長期投資とは、全く異なるリスクを負うことになりますので、しっかり勉強してから取り組むのがおすすめです。
まとめ
今回の記事では、株式投資に関して次の5つをご紹介しました。
この記事のポイント
●投資初心者の方は、株式投資から始めるのがおすすめ。
●株式投資は、投資信託からスタートするとリスクが小さい。
●投資信託はインデックスファンド(パッシブ)を選択する
●インデックスファンドを運用するなら税制優遇制度をフル活用しましょう。
●自分のリスク許容度に合った運用額を決めるコツは、最大の損失を「投資額の3分の1」と仮定すること
個人的には、ご家族でつみたてNISAや確定拠出年金をフル活用してインデックスファンドへ投資するだけでも、一般的な老後の生活に関してはかなり安泰な状態までもっていけると思います。
ぜひ税制優遇制度も上手に活用しながら、投資に取り組んでみてください。
次回はさらに一歩進んだ投資の世界である不動産投資について書かせていただきたいと思います。
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渡邉さんありがとうございました。
今回も読者の方からの質問を受付中です!
メディ太のTwitterへリプライorDMでご連絡いただければ、後日この記事内で渡邉さんから回答させていただきます。
最後までご覧いただきありがとうざいました!
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