この記事では、MRが仕事で使える心理学の知識を「事例」「活用例」も交えながら解説しています。
今回は顧客や上司に対する「交渉」時に活用できる心理学の知識をご紹介します。
誰もが提案する前には入念な準備を行いますが、その準備に心理学を意識した話の組み立て方を意識していますか?
「YES」を引き出す確率を上げるために、心理学の知識は役立ちますよ!
知識を活かして周りのMRと差をつけましょう!

①結論のタイミングは相手の性格に合わせる
仕事の会話では「話は結論から述べる」とよく言われますが、交渉の時には相手の性格や交渉のシチュエーションによって、伝えるタイミングを変える必要があります。
心理学では以下の2つのパターンがあります。
●クライマックス法:雑談をしてから重要な話をする方法
●アンチ・クライマックス法:最初に重要な話をする方法
それぞれの使い分けに関してご紹介します。
クライマックス法
【適した相手の状況】
●相手が話に興味を持っている
●相手が話を最初から最後までしっかり聞いてくれる性格である
●相手が比較的時間に余裕がある
【適した場面】
●プレゼンテーション(発表、説明会)
●アポイント面談(一部例外あり)
アンチ・クライマックス
【適した相手の状況】
●相手が話に興味を持っていない
●相手が合理的な性格で、結論を求めるタイプである
●相手が急いでおり、時間に余裕がない
【適した場面】
●電話
●立ち話
●アポなし訪問(一部例外あり)
このように、タイミングは相手の「性格」「関心度」「忙しさ」に応じて使い分ける必要があります。
誰もが話の展開はある程度シュミレーションしてから望むと思いますが、その日の相手の忙しさは完全に読むことができません。
シュミレーション通りに何でも実施しようとせず、相手の状況に応じて臨機応変に対応できる余地を持っておきましょう!
②小さなお願いから始める
相手が受け入れやすい小さなお願いから開始し、そこから徐々に要求を大きくして本命の要求を通す方法です。
心理学ではフット・イン・ザ・ドアと呼ばれるテクニックです。
家のドアに足を挟めば、ドアは閉まらずに徐々に入り込めるというイメージから名前がついているようです。
●無料お試し期間に申し込んだら、つい有料会員になってしまった
●試食で何種類も勧められるままに食べたら、つい購入してしまった
なぜ、このような現象が起こるかと言うと、一貫性の原理が発生するからと言われています。
一貫性の原理
自分自身の行動や発言は一貫したものでありたいという心理
【例】
●今日の夕食を何にするか聞かれて「何でもいい」と答えたので、実際に出たメニューが気分と合わなくても納得する。
●自分の発言が間違っていたと途中で気付いても、引くに引けなくなって主張を続けてしまう。
このように、周りから「ブレない人」と認識されたいと思う心理ということです。
この一貫性の原理を活用し、小さなお願い(フット・イン・ザ・ドア)から徐々に要求を大きくしていくとどうなるでしょうか?
このような事例は、皆さんの会社でも経験ありませんか?
結局、男性のアドバイスを少しだけするつもりが、女性は仕事を代わりに行うことになりました。
この事例では、「YES」を積み上げながら断りにくい一貫性の心理状態が構築されたことで女性は仕事を引き受けました。
しかし、以下だったらどうでしょうか?
いきなりすぎて、多くの方は断ると思います。
このように、大きなYESに向かうために、小さなYESを積み上げていく話の展開を考えてみましょう。
MRの提案例を最後に挙げてみます。
MRのフット・イン・ザ・ドア話法例
●まずは○○の疾患背景からご検討いかがでしょうか?
●まずは臨時採用からでもいいのでいかがでしょうか?
●まずは院外採用からでもいいのでいかがでしょうか?
●まずは少数からご検討いかがでしょうか?
この話法例のように、限定的な部分で許容してもらってから徐々に拡大していくのは実践的だと思います。

③わざと過大な依頼から開始する
過大な要求を最初にぶつけて断られてから、本来の要求を依頼して承諾を得る方法です。
これをドア・イン・ザ・フェイスと呼びます。
無理な依頼をすることで、ドアが顔の前で閉められるイメージから名前がついているようです。
こんな疑問を持っていただいた方、ありがとうございます!
確かに、私は小さな要求から始める方法が好みではありますが、状況によっては過大な要求から始めることが有効な時もあります。
●1万円貸して欲しいと言われたので断ったが、5千円貸すことにした
●1年契約を求められたが、まずは半年契約をすることにした
相手はダメ元で大きな条件を提示してきたので断りますが、断った側に「申し訳ないなぁ」という気持ちが少しでも残っていれば、次の要求を受け入れやすくなります。
この方法は、最初に提示された条件を基準にインプットされ(アンカリング)、その後の交渉を有利に進めやすくなります。
しかし、その反面であまりにも過度な要求を最初にすると、相手が不快な気分になり、交渉自体ができなくなるリスクもあります。
無茶過ぎる要求は設定しないように注意しましょう。
MRの提案例を最後に挙げてみます。(②と逆の内容です)
MRのフット・イン・ザ・ドア話法例
○○の症例背景で検討はいかがですか?難しければ、○○だけでもいかがでしょうか?
④影響力を使う
社会的に「権威」を持つ人の影響力を使って提案を通す方法です。
これを社会的勢力と呼びます。
もともと人は正しいと思うことに「同調する」性質を持っています。
代表的な同調するパターンを2つご紹介します。
同調しやすいパターン
①社会的に権威を持つ人の行動・発言
②多くの人が行っていること
特に①では、その人の地位だけでなく、高級時計・高級車など権威を感じるものを持っていると、発揮されやすくなります。
MRをしていると、著名な医師に講演を依頼する機会が出てきますが、まさしくこの権威性の持つ影響力を目的としています。
日頃の活動から、全国・エリアで影響力のある人物を見極めておきましょう!
最後に余談ですが、社会的勢力には、7つの影響力の種類があります。
恐らく、皆さんもそれぞれの項目毎に経験があるのではないでしょうか?
興味があればご一読ください。
社会的勢力に関する7つの影響力
①賞勢力:従うことで利益を得られると思う
②罰勢力:従わなければ不利益を被ると思う
③正当勢力:社会的立場上、従うべきと思う
④専門勢力:専門家という立場に従おうと思う
⑤参照勢力:憧れを抱き、真似したいと思う
⑥情報勢力:説得力があるので従おうと思う
⑦魅力勢力:好意のある人から依頼されれば従おうと思う

⑤特別感を演出する
特別感を演出することで、好意的な行動を誘発することです。
これをハード・トゥ・ゲット・テクニックと呼びます。
日本語で「入手困難なもの」という意味になります。
このように言われて、悪い気はしないのが多くの人間の心理です。
特別な気分にするとなぜよいかと言うと、人間は「他者に認めてもらいたい」という基本的な欲求を持っており、このハード・トゥ・ゲット・テクニックはちょうどその欲求を満たすことになります。
特別感を演出すると、相手は今までよりも好意的・親身になってくれる確率がUPしますので、有効に使いましょう。
MRのハード・トゥ・ゲット・テクニック活用例
●この話は○○先生にしかできない内容ですが・・・
●この情報は○○先生のために調査したのですが・・
●○○先生にしかご相談できない内容になるのですが・・
●この企画は○○先生のためにご用意しました
ただ依頼・相談するのと、このような特別感を出す表現を加えるのとでは、相手への伝わり方に雲泥の差が生まれます。
工夫した話し方を心がけましょう!
まとめ
今回は「交渉」をテーマに、社内・社外で使える心理学の知識を実践的にご紹介しました。
この記事では、伝え方の微妙な違いが大きな差になるということを少しでも感じていただければ嬉しいです。
小さな積み重ねが大きな結果の違いになりますので、ぜひ読者の皆様にはこの知識を使って成果につなげていただけると嬉しいです!
本日も最後まで読んでいただきありがとうございました!
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