株式投資をしている方で、年間収支が赤字になってしまった時に確定申告をしていますか?
この記事では「損益通算」「繰越控除」という株式投資をする人は知っておくべき税金に関する知識をご紹介します。
不本意ながら投資でマイナスになったとしても、まだできることはありますよ。
この記事はこのような方向けです。
【株式投資の税率】税率と証券口座ごとの納税申告方法
株式投資をした場合、得られた利益の20.315%を税金として納める必要があります。
この課税手続きは、「特定口座」「源泉徴収あり」を選択している方であれば証券会社が代理で手続きしてくれています。
株価値上がりで得られた利益(キャピタルゲイン)、配当金で得られた利益(インカムゲイン)などにそれぞれ課税されていることを覚えておきましょう。
※外国株での配当等は上記に加えて別途10%課税されますが、確定申告で外国税額控除を行えば二重課税分の10%は戻ってきます。
証券口座の種類と税金手続き
●特定口座:証券会社が、年間の利益や損失を「年間取引報告書」にまとめてくれます。
●一般口座:年間取引報告書作成や、税金計算~納税手続きを自分で行う必要がある。
●源泉徴収あり:証券会社が投資家に代わって税金を計算~納税をしてくれるので、確定申告が不要。
●源泉徴収なし:年間取引報告書をもとに、確定申告で納税手続きを自分でする必要がある。
こう思った方がおられるかもしれません。
しかし「特定口座・源泉徴収あり」を選択していた方も、確定申告をすることで有利(節税)につながるケースがありますよ!
必ず知っておきたいのは「損益通算」「繰越控除」「損出し」の3つです。
株式投資を行う方は、ぜひ知っておきましょう。
【株 損益通算】特定口座で損益通算のメリットがあるケース
損益通算とは、年間の利益と損失を相殺することができる制度です。
例えば、譲渡益が20万円で譲渡損失が100万円発生した場合、譲渡益に対して約4万円の課税が発生しますが、損益通算すると-80万円になるため20万円の利益が相殺されて約4万円の課税は還付として戻ってきます。
こう思った方がいるかもしれません。
確かに、「特定口座・源泉徴収あり」の口座を開設していれば、年間の損益通算は証券会社が自動計算してくれます。
しかし、楽天証券とSBI証券など複数の口座で運用している場合、「特定口座・源泉徴収あり」の場合であっても自動的に損益通算されることはありません。
複数の証券口座を運用し、それぞれで損益が発生している場合は、自分で確定申告をして損益通算することを覚えておきましょう。
複数口座の損益通算イメージ
●Aさん:損益通算していないケース(特定口座・源泉徴収あり)
・△株を楽天証券で運用して譲渡利益100万円(約20万円が税金)=実質約80万の利益
・□株をSBI証券で運用して譲渡損失100万円
⇒Aさんは今回の株取引での利益は-20万(さらに手数料分のマイナスあり )
●Bさん:損益通算を行ったケース(特定口座・源泉徴収あり)
・△株を楽天証券で運用して譲渡利益100万円(約20万円が税金)=実質約80万の利益
・□株をSBI証券で運用して譲渡損失100万円
・確定申告で損益通算を行ったので、△株の取引で発生した課税20万円が戻ってくる。
⇒Bさんは今回の株取引での利益は±ゼロ(手数料分のマイナスあり)
【株 繰越控除】譲渡損失を出した時の繰越控除とは?
株式等の取引により生じた譲渡損失額を最大3年間繰越すことができる制度です。
例えば、1年間の中で株式による「110万円の損失」と「10万円の利益」が発生し、100万円の損失が発生が出たとします。
この時に、マイナス100万円を翌年以降、最長3年間損失を繰り越して控除することが可能となります。
繰越控除の注意点として、「繰越を行った年~翌3年間」は毎年確定申告をする必要があります。
もし株式を売却しなかった年があっても確定申告が必要になりますので、申告を忘れないようにしましょう。
【株 損出し】含み損のある保有株を一時売却で損失確定させる
損出しとは、含み損のある株を一旦売却することで損失を確定させ、課税される税金を節税する方法です。
繰り返しになりますが、株式投資で得られた「利益」に対して20.315%が課税対象となります。
しかし、他の取引で損失が発生していると損益通算されるため、利益に対する課税額を少なくすることができます。
株の損出しのイメージ
●Aさん:損出しを行っていないケース
・□株の含み益100万円を売却⇒売却益100万円(約20万円が課税対象)
・△株の含み損100万円は保有を継続⇒売却していないので損益発生しない
・確定した利益100万円、損失0円、△株は保有継続中⇒課税後の80万円の利益をGET
●Bさん:損出しを行ったケース
・□株の含み益100万円を売却⇒100万円の利益(約20万円が課税対象)
・△株の含み損100万円は一時的に売却⇒100万円の損失(課税ゼロ)→数日後買戻し
・一時的に売却した△株を数日後に売却と同値で買戻し
・確定した利益100万円、確定した損失100万円、△株は保有継続⇒課税ゼロになるため100万円の利益をGET
税金は、その年の確定した利益と損失によって計算されます。
ですので上記イメージでご紹介したように、含み損のある銘柄は損失を確定させて同値付近で買戻しを行えば、課税対象の利益を実質的に減らすことができるので節税(税金支払いの先延ばし)につながります。
損出しが有効な条件
①年内に確定した利益があること
②保有銘柄に含み損の銘柄があること
繰り返しになりますが、NISA口座では損益通算や繰越控除はできないので注意してくださいね。
こう思った方は、ざっくりと以下のイメージでOKです。
●損出し⇒一時的に損失を確定させて、同値付近で買い戻す
●損切り⇒損失を確定させて、買い戻しをせずに他の投資対象へ移行する
確定申告する前に知っておくべきポイント
「特定口座・源泉徴収あり」の場合、売却益や配当金を前年以前から繰り越した売却損と相殺するために確定申告をすると、その年の合計所得金額が膨らみます。
すると、得た利益額次第では「配偶者控除、扶養控除、住宅ローン控除、国民健康保険料、住民税」などに影響を及ぼしてしまう可能性があります。
源泉徴収ありの特定口座の場合、売却益を確定申告するかどうかは自由です。
●売却益や配当金を申告して税金を取り戻すほうが得?
●売却益や配当金を申告せずに配偶者控除や扶養控除などを享受し、国民健康保険料の値上がりを回避するほうが得?
上記2パターンを試算して、メリットの多い方を選択しましょう。
Q:株式等の譲渡による所得や配当所得は、扶養控除や配偶者控除等の判定をする際の「合計所得金額」に含まれますか?
A:株式等の譲渡所得等(上場株式等にかかる譲渡損失の繰越控除および特定株式にかかる譲渡損失の繰越控除の特例の適用前の金額)は、確定申告をした場合、「合計所得金額」に含まれます。したがって、扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除、寡婦(夫)控除等の所得控除や住宅借入金等を有する場合の税額控除、居住用財産の譲渡損失の繰越控除の特例等の適用を受けることができなくなる場合があります。「源泉徴収ありの特定口座」で申告をしなければ、合計所得金額に含めなくてよいことになります。
また、株式の配当金や公募株式投資信託の収益分配金を申告した場合も、申告した収益分配金は、合計所得金額に加算されます(譲渡損失と損益通算した場合は、通算後の金額が加算されます)。
なお、2016年以後は、公社債等の譲渡所得等や、公社債の利子・公募公社債投資信託の分配金を確定申告した場合も「合計所得金額」に含まれます。
※控除を受けようとする本人の合計所得金額が1,000万円超の場合、配偶者の合計所得金額にかかわらず、配偶者控除・配偶者特別控除の適用が受けられなくなります。
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どのように申請すればいいの?
毎年、確定申告が必要です!忘れずに申請しましょう!
- 印鑑
- 給与所得、退職所得、公的年金などの源泉徴収票
- 個人番号および本人確認書類
- 取引報告書、受渡計算書など一年の取引の損益が計算できるもの
申告時の注意点は?
3年間遡れますが、既に「確定申告済」かつ「特定口座(源泉徴収あり)」の場合は遡って申告できません。(更正の請求不可)
なぜなら、特定口座(源泉徴収あり)の場合は過去に確定申告していなかった場合、既に申告しないと選択したものとみなされるからです。
源泉徴収ありの特定口座は、他の口座との損益通算や売却損の翌年以降への繰り越しに関して、必ず確定申告をしましょう!
まとめ
今回は「損益通算」「繰越控除」に関してご紹介しました。
確定申告に抵抗感がある方もおられるかもしれませんが、実際にやってみるとそこまで時間を要さずにまとまった金額が還付されることもあるので、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
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本日も最後までご覧いただきありがとうございました!
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