成功を収める人の特徴に「ギバーであること」が挙げられるのをご存知でしょうか?
ギブ&テイクは有名な言葉ですが、ギバーとは「見返りを求めずに先に相手に与える人」のことです。
例えば最近の成功例では、YouTubeや書籍で有名な両学長が「GIVEの精神」を重視した情報発信やコミュニティ運営があります。
また、製薬会社MRや保険営業マンが売上上位になる条件に「ギバーであること」が秘訣であるとも言われています。
そこで、ギバーについて解説した名著「GIVE&TAKE-与える人こそ成功する時代」を解説します。
やや長めの記事ですが、原著382ページから大事なエッセンスをできる限り凝縮しましたので、参考にしていただけると嬉しいです。
この記事のポイント
●人には「ギバー、テイカー、マッチャー」の3タイプがある
●ギバーの精神は大きな成功を収める人に共通する項目である
●先に与える人こそが、あとでもっとも成功する
●ギバーは中長期的視点で考えると利益を手にする確率がUPする
●ギバーの行動は「利他的に振る舞い、ゆるいつながりを財産とし、利益のパイを増やし、他者のよいところを引き出す」
●自己犠牲のギバーは破滅するので要注意
自分はどのタイプ?「ギバー、テイカー、マッチャー」
人間には次の3つのタイプがあるとされています。
3種類のタイプ
①ギバー(人に惜しみなく与える人)
②テイカー(真っ先に自分の利益を優先させる人)
③マッチャー(損得のバランスを考える人)
それぞれの特徴を下図にまとめました。
ご自身や同僚を思い浮かべながご覧ください。
ギバー (与える人) | テイカー (受けとる人) | マッチャー (バランスをとる人) | |
利益 | 相手の利益を優先する | 自分の利益を優先する | 自分と相手の利益の バランスを優先する |
行動 | 受け取る<与える ※見返りを求めない | 受け取る>与える ※見返りがないと与えない | 受け取る=与える ※受け取ったら与える |
思考 | 他人中心 | 自分中心 | やや自分中心 |
興味 | 相手が求めることに 興味を持つ | 自分の求めることに 興味がある | 相手の出方に合わせて 興味の範囲が変わる |
成功する可能性 | 高い | 平均的水準 | 平均的水準 |
失敗する可能性 | 高い | 平均的水準 | 平均的水準 |
Aさんのために何をしてあげられるだろうか?
Aさんに依頼を受けて欲しい用件があるから、今のうちに恩を売っておこう
Aさんに食事を奢ったから、御礼の挨拶や何らかの行動があるだろう。
3タイプの線引きは厳密なものではなく、1人の人間が「自分の役割や相手との関係性によってタイプを使い分ける」という性質があります。
例えば、普段はテイカー気質な人であっても、両親・兄弟・妻・子供・親友・など特定の人にはギバーとして自分が払う犠牲はあまり気にせず手助けするということがあります。
しかし、仕事になると多くの人が3タイプのうちどれか「1つ」になって、人と関わっているのです。
職場内では、たいていの人がマッチャー(バランスをとる人)になりやすい傾向にあります。
マッチャーは常に”公平”という観点にもとづいて行動する。
だから人を助けるときは、見返りを求めることで自己防衛する。
マッチャーは相手の出方に合わせて、助けたりしっぺ返しをしたりしながら、ギブとテイクを五分五分に保つのである。
引用:GIVE&TAKE
成功できるかできないかは、勤勉さ・才能・幸運と同じくらい「どのタイプであるか?」が重要な要素になります。
この「どのタイプであるか?」という部分は、稲盛和夫さんが仰っている人生成功の方程式「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」の「考え方」に当てはまります。
そこで、次項からはギバー(与える人)になり、幸せな成功者になる理由を解説していきます。
【GIVE&TAKE意味】ギバーが幸せな成功者になる理由
「先に与える人こそが、あとで最も成功する」
なぜならギバーは、成功から価値を得るだけでなく、価値も生み出すからです。
仮に、テイカーやマッチャーが成功した場合をイメージしてみましょう。
この2つのタイプが成功するということは、ほかの誰かが負けることになり、「妬み」「不評」「足の引っ張り合い」になりやすい傾向があります。
みなさんの身近にも、他人を利用したり蹴落として昇進した人は「妬み」の噂が回ってくる経験があるのではないでしょうか?
あの人、最速で管理職に昇進したけど、自分の利益にならないことには無関心すぎるからマネジメント力を冷静に見ると全然ダメだよね。
一方で、ギバーが成功する場合、周囲の人びとの成功を増幅させて価値を生み出したことにより、周囲が声援を送り、非難されることはありません。
最速での管理職昇進おめでとう!自分のことのように嬉しい!
一見するとギバーは「お人好しで、他人にいいように使われる人」と思われがちですが、幸せな成功者が多いのです。
先に成功を手にしたギバーが教えてくれるのは「先に与える人こそが、あとでもっとも成功する」ということです。
誰もが勝たせてくれようとしてくれれば、勝つのは簡単だ。
まわりに敵がいなければ、成功するのは簡単になる。
引用:GIVE&TAKE
ここまで読んでいただいて、こう思った方は非常に鋭い着眼点ですね。
確かに、「人を思いやること=成功」に直結しないことがあるのも事実です。
下図をご覧ください。
ギバー (与える人) | テイカー (受けとる人) | マッチャー (バランスをとる人) | |
短期的利益 | 役に立たない | 役に立つ | そこそこ役に立つ |
中期的利益 | 役に立つ | そこそこ役に立つ | そこそこ役に立つ |
長期的利益 | とても役に立つ | 役に立たない | そこそこ役に立つ |
一方が得をすれば他方が損をするというゼロサムゲームや、どちらか一方が勝つか負けるかという関係性では、ギバーが利益をもたらすことはまずないでしょう。
しかし、私たちの生活している世の中で、1発勝負のゼロサムゲームが大半を占めるでしょうか?
仕事で考えてみると、顧客・同僚・競合他社との関係性は1発勝負のゼロサムゲームの方が少ないと思います。
つまり、ギバーは自己犠牲的に思える決断が短期的に損をしたように見えても、好意と信頼を築き上げ、時間とともに大きくなった評判と人間関係が成功へと導くのです。
ギバーであることは100メートル走では役に立たないが、マラソンでは大いに役立つ
引用:GIVE&TAKE
さらに、現代社会はSNSやコミュニケーション手段が充実したことで情報の駆け巡るスピードが格段に速くなりました。
その結果、ギバーが成功を手にするまでの時間がこれまでよりも加速し、ギバーの重要性が高まっているのです。
次項では成功しているギバーの行動を4つ取り上げて、自身に応用できるヒントを解説します。
【ギバーの行動①】利他的に振る舞い、与えることを重視する
ギバーは、利他的に振る舞うことで「人脈」というネットワークを通じて、長続きする価値をつくることができます。
人脈をつくるポイント
●ギバー⇒利他的に振る舞う(人助けや、相手のためになる行動をする)
●テイカー、マッチャー⇒仮面をかぶった泥棒(自分の頼み事や利点がある時だけ愛想良く、別の所では悪口や知らん顔をする)
人脈は人間関係がもつパワーをもとに機能しているので、GIVE&TAKEが成功におよぼす影響を理解するうえでとても重要になります。
人脈の3大メリット
①個人的な情報
②多種多様なスキル
③権力
①~③のような、知識・専門的技術・影響力を利用できるようになる。
ある調査では、豊かな人脈をもつ人は「より高い業績を達成」「昇進が早い」「収入が多い」ということがわかっています。
ちなみに、ギバー・マッチャー・テイカーの3タイプとも人脈をつくることは可能ですが、人脈を構築する過程は全く異なります。
ギバーの行動
自分が受け取ることを打算せずに、まず相手に与えることを優先する。
テイカー&マッチャーの行動
先を見越して、自分が近々助けてもらいたいと思っている人にだけ親切にする。
こう思った方は、テイカーやマッチャーの人脈づくりをイメージされているのではないでしょうか?
俺には社内の偉い人にも人脈が豊富だから他とは違うんだ。
こんなタイプの人が身近にいると、人脈づくりはどうしてもネガティブイメージになりますよね。
頼みごとがある時だけ愛想が良く、欲しいものが手に入った後は手のひらを返すようなタイプの人脈づくりは仲間から煙たがられるので中長期的視点では役に立ちません。
本当の人脈作りとは、「新しい人やアイデアとつながるための魅力的な手法」なのです。
このように考え、利他的な振る舞いで構築した人脈は、きっと自分の財産になりますよ!
自分にまったく利益をもたらさない人間をどうあつかうかで、その人がどんな人間かがはっきりわかる。
引用:GIVE&TAKE
【ギバーの行動②】ゆるいつながりを財産にする
ギバーは、ゆるいつながり(ちょっとした知り合い)から大きな恩恵が得られるようになっていきます。
なぜなら、ゆるいつながりは自分と異なるネットワークから新しい情報を効率的に運んでくれるので、きっかけを発見しやすくなるからです。
強いつながりとゆるいつながりの特徴
●強いつながり(親友や同僚など)⇒絆を生み出す
●ゆるいつながり(ちょっとした知り合いなど)⇒橋渡しとして役に立つ
こう思われたかもしれません。
ゆるいつながりに重要なことは「リコネクト(再びつながること)」であり、ギバーの方が休眠状態の知人にも再びつながりやすいという特徴があります。
ギバーのリコネクト
休眠状態の知り合いでも信頼関係は残った状態にあるので、ネットワークをいつでも活かすことが可能。
テイカー&マッチャーのリコネクト
これまでの振る舞いから、休眠状態の知り合いに再びアクセスしても「相手に避けられる」or「貸しを作ってしまう」という状態に陥るので、ネットワークを活かしきれない。
さらにギバーは、年齢を重ねるほど休眠状態のゆるいつながりは増えるので、財産は増加し続けるのです。
このような点からも、自分のネットワークの人々にギバーとして気前よく知識や時間を分け与えていくことが大切になります。
【ギバーの行動③】利益のパイを大きく増やす
ギバーは、自分だけでなくグループ全員が得をするようにパイ(総額)を大きくすることを考えます。
自分の時間と知識を分け与えて仲間を助ける人は、結果的に恩が返ってきて成果やチャンスが増えるのです。
さらに、ギバーであることによって、同僚たちから足の引っ張り合いに遭遇することが減ります。
優秀な人に対する周囲の反応
●ギバーかつ優秀な人⇒周囲から尊敬される(これまでの貢献を感謝される)
●テイカーかつ優秀な人⇒周囲から妬み、恨まれて足元をすくわれる
●マッチャーかつ優秀な人⇒周囲から嫉妬、陰口をたたかれる
こう思った方は、自分の知識と時間を提供することに加えて、以下のことを心がけてみてはいかがでしょうか?
ギバーが心がけていること
うまくいかない時は自分が責任を負う。
うまくいっている時は、すぐにほかの人を褒める。
【ギバーの行動④】可能性を掘り出し、精鋭たちを育てる
ギバーは、人と接する時に「その人の1番よいところを引き出そう」と心がけます。
人をみな「大きな可能性を秘めた人」として、良さを見出そうとすることで人を育てることも可能になっていきます。
人に対する接し方の違い
●ギバー⇒可能性の片鱗が見え隠れするまで待たずに、可能性を見出そうとする。
●テイカー⇒人の可能性を信じようとせず、仲間のやる気と成長を妨げる。やる気がある人は脅威と感じて支援しない。
●マッチャー⇒仲間が高い潜在能力を示せば、それにふさわしい対応をする。
人間には、「自己成就予言」という現象が起こります。
自己成就予言
他人から期待されると、それに沿った行動をとって期待通りの結果を実現すること。
ここまで読んでお気づきかもしれませんが、自己成就予言を引き出せるのはギバーです。
心理学の研究でも、人が才能を伸ばすきっかけは「やる気」であることが示されているのもギバーを後押しする根拠の1つになるでしょう。
【ギバーの行動⑤】意見を聞いて、相手の力になろうとする
ギバーは、ほかの人の考え方や捉え方に心から関心を持ち、聞き出すことで相手の力になろうとします。
説得や交渉の場では、他の人のアイデアや視点を心から尊重し、控えめに話し、意見を聞く姿勢で臨んでいます。
コミュニケーションの違い
●ギバー⇒控えめな口調で、積極的に相手の意見を聞く
●テイカー⇒断定的な口調で、聞く耳を持たない
●マッチャー⇒やや断定的な口調で、自分の都合に応じて相手の意見を聞く
「質問力」は非常に重要で、影響力にも関係します。
なぜなら、人は質問をされることで好意を示し、行動変容を起こす力があるからです。
一方で、テイカーのような強気なコミュニケーションは、チームワークの面ではメンバーの称賛を失う要因になります。
テイカーは、実際に有能ではなくても、有能であるかのように振る舞うことで影響力を手に入れようとすることがあります。
【ギバーの注意点】他人に尽くしすぎる都合のいい人で終わらない
ここまでギバーのメリットや行動例をご紹介しましたが、「最も成功しない人」で終わる可能性があることにも注意が必要です。
ご自身や同僚を思い浮かべながご覧ください。
ギバー (与える人) | テイカー (受けとる人) | マッチャー (バランスをとる人) | |
利益 | 相手の利益を優先する | 自分の利益を優先する | 自分と相手の利益の バランスを優先する |
行動 | 受け取る<与える ※見返りを求めない | 受け取る>与える ※見返りがないと与えない | 受け取る=与える ※受け取ったら与える |
思考 | 他人中心 | 自分中心 | やや自分中心 |
興味 | 相手が求めることに 興味を持つ | 自分の求めることに 興味がある | 相手の出方に合わせて 興味の範囲が変わる |
成功する可能性 | 高い | 平均的水準 | 平均的水準 |
失敗する可能性 | 高い | 平均的水準 | 平均的水準 |
大切なことは、他者志向で受け取るよりも多く与えたとしても、決して自分の利益は見失わずに「いつ、どこで、どのように、誰に与えるか」を決めることです。
上図のように、ギバーは2つのタイプに分けることができます。
他者志向の成功するギバー
他者志向で受け取るよりも多く与えたとしても、決して自分の利益は見失わずに「いつ、どこで、どのように、誰に与えるか」を決める。
他者への関心に自己への関心がかなり結びつけば、ギバーは燃え尽きたりやけどすることが少なくなり、成功しやすくなる。
他者志向の成功するギバーとは、「自分のできる範囲内で相手に与え続ける」というイメージです。
自己犠牲的なギバー
病的なまでに他人に尽くすあまり、自分自身のニーズを損ねる。
自分のことを省みずに相手に時間をエネルギーを割き続け、そのツケは自分が払う。
自己犠牲的なギバーの例では、「お金が苦しいのに無理して食事を奢る」「好意を寄せる相手の言動を我慢し続ける」などがあります。
このような場合、GIVEが長続きせずに自分がどんどん破滅してしまいます。
見返りを求めずに相手に与えることは素晴らしいですが、自分の全てを放棄する必要はありません。
ギバーをうまく利用しようとするテイカー気質な人に対して、与えても搾取・利用され続けてしまいそうな時は、無理して与え続ける必要はありません。
まとめ
本日は、GIVE&TAKEの中でも特に重要な項目を解説しました。
●人には「ギバー、テイカー、マッチャー」の3タイプがある
●ギバーの精神は大きな成功を収める人に共通する項目である
●先に与える人こそが、あとでもっとも成功する
●ギバーは中長期的視点で考えると利益を手にする確率がUPする
●ギバーの行動は「利他的に振る舞い、ゆるいつながりを財産とし、利益のパイを増やし、他者のよいところを引き出す」
●自己犠牲のギバーは破滅するので要注意
ギバーはハードルが高いと感じるかもしれませんが、きっと誰もが家族や友人に対して無意識にギバーとして行動したことがあるはずです。
仕事になると利害が絡むので難しくなりがちですが、あえてギバーとして行動してみてはいかがでしょうか?
本日も最後までご覧いただきありがとうございました!
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