近年の製薬会社は市場環境の変化に伴い転換期を迎えています。
特に日本国内は後発品推進や市場規模縮小などでMRも影響を受けています。
そこでこの記事では国内MRにフォーカスし、MR認定センターが公表している「MR白書」から主要なデータを年度別推移でまとめてみました。
また、記事後半では「管理職」「医薬品卸MS」推移も掲載しましたので、業界の現状把握にお役立てください。
この記事のポイント
●国内MRの総数は49,682人で、前年度から2,166人減少。
●コントラクトMRの比率が8.9%(4,409人)と増加している。
●MRの薬剤師比率は8.7%(4,311人)で減少傾向にある。
●管理職の人数は7,566人で、前年度から161人減少しました。
●MS人数は14,265人で、前年度から1,108人減少
【MR数の推移】2000~2022年度の国内MR総数
国内MRの総数は49,682人で、前年度から2,166人減少しました。
MR数のピークとなった2013年の65,752人から毎年減少し、10年間でみると16,070人ものMRが減少した結果となりました。
近年の流れから考えると、MR数の減少トレンドが転換する目途はなさそうに感じます。
2000年のMR数49,212人を下回る時が来るのは時間の問題でしょう。
全体のMR数は減少していますが、企業属性別(内資・外資・CSO・卸)にMRの比率をみると、CSOの比率が8.9%まで増加しています。
そこでコントラクトMR数のみデータを抽出してみると、総数は4,409名と増加トレンドにあることがわかります。
日本の労働環境制度面から、正社員の雇用よりも製品ライフサイクルに合わせてコントラクトMRで営業人員を調整する動きが活発化していることが示唆されます。
複数の要因が互いに影響していると思っています。
特に、以下の3つの環境要因は大きな影響を与えていると予想されます。
3つの環境要因
①毎年薬価改定・ジェネリック推進に伴う国内医薬品市場の低成長
米国の調査会社IQVIAが発表している医薬品市場予測レポートでは、日本市場の成長率が-3%~0%と先進国の中で最低水準が予測されています。
背景には「毎年薬価改定」や「後発品推進」により新薬の収益性が従来より悪化していることに加え、日本は海外と比較して人材の流動性が低いため正社員を多く抱えることはコスト面で経営リスクになっています。
②新薬開発の難易度上昇(大型新薬の減少)
「開発コストの増加」や「新薬創出の難易度上昇」で昔のようにプライマリー領域で大型新薬がいくつも登場する市場環境ではなくなってきました。
そのため、1製剤の販促にMRのコール数で勝負する戦略は難しくなってきたことから人的資源に対する考え方が変化しています。
③デジタル化シフトが加速
COVID-19の影響で、従来はMRが対面で面談できていた顧客と「訪問規制」によって接点が失われる事態に直面しました。
代替としてWeb面談・メール・m3などのツールが浸透し、業務のデジタル化が製薬業界も加速しています。
その結果、顧客接点が減少してデジタル活用が進んだことで、営業人員削減にシフトする動きが近年は顕著に出ています。
【MRの内訳】薬剤師比率・男女比・年齢構成の推移
ここからはMRの内訳として「①薬剤師比率」「②男女比」「③年齢構成」の3つをみていきましょう。
- 薬剤師比率⇒2022年度は8.7%(4,311人)
- 男女比率⇒2017年度データでは男性85.2%、女性14.8%
- 年齢構成比率⇒2017年度データでは20~30代の割合が57.6%
MRの薬剤師比率
2022年度に薬剤師資格を保有するMRの数は4,311名でした。
実は、4,311名は2000年から公開されているMR白書の中で最少値です。
2000年度の方が薬剤師資格を保有するMRが約2倍多かったのは意外だったので驚きました。
薬剤師比率でみると2022年度は8.7%でした。
2017年度からは薬剤師比率10%未満の水準が継続しています。
社内の新卒採用状況を見ていると薬剤師比率は40~50%前後のイメージがあったので年々比率が高まっているのかと思っていましたが、私の予想とは完全に逆の結果でした。
MRの男女比率
2017年度のデータでは男性85.2%(53,185人)、女性14.8%(9,248人)です。
近年は働き方の見直しで制度が改善したこともあり、さらに女性比率は高くなっていると予想されます。
MR白書では、男女別MR数の調査は2017年度以降、公表されておりません。
MR数でみてみると、女性MR数は2000年の2,076人から2017年は9,248人(約4.5倍増)となっています。
製薬業界として、まだまだ課題はありますが男性偏重の文化が是正されてきて女性社員も働きやすい環境へと徐々に改善されているのは良い傾向だと私は感じています。
MRの年齢構成比率
年齢構成比率は、2003年度に20~30代の割合が68.2%でしたが2015年度は57.6%になっています。
MR白書では、年齢構成比率の調査は2015年度以降、公表されておりません。
データは2015年度までですが、現在は40~60代の比率が増加していると思います。
その理由は「新卒採用数の減少」「定年退職者のMR再雇用」が挙げられます。
- 新卒採用数の減少⇒近年は「採用なし」や30名未満の「少数採用」が目立つ
- 定年退職者のMR再雇用⇒再雇用制度により定年後にMRをする人が増加
日本の再雇用制度によって、従来よりも長く働ける仕組みとなりました。
企業側としては、国内の市場環境悪化を受けて人員を多く抱える体力が失われているため、新入社員の採用数を減らして人件費(販管費)が収益を圧迫しないように留意する必要性があります。
その結果、MRの人口ピラミッドは若い世代の割合が減少しやすい環境にあると推察されます。
【管理職の推移】人数と男女比
ここからは「管理職」のデータを確認してみましょう。
管理職の人数は7,566人で、前年度から161人減少しました。
2019年以降は管理職者数が4年連続減少しているものの、MR数ほどの減少トレンドではないことが示唆されます。
会社にとって、管理職としてメンバーをマネジメントするポストは一定数必要です。
組織体制の変化でポストの数は変動しますが、一定数は今後も保たれる傾向にあるでしょう。
ちなみに、管理職の男女比データをみると2017年度で女性比率3.0%と、男性中心の環境が見受けられます。
2022年に日刊薬業で「女性管理職比率13.5%」「内資企業の女性管理職比率は10.0%」という報道がありましたので女性比率は年々増加していると予想されます。
外資系企業の方が女性管理職が多く、内資系企業はやや遅れている印象があります。
ただ、女性MR比率も増加しているため、外資・内資どちらも女性管理職が今後も増加していくでしょう。
MR白書では、管理職の男女比率調査は2017年度以降、公表されておりません。
【医薬品卸MS】2004年~2022年のMS数推移
MRと関係の深い医薬品卸MSさんの推移をまとめました。
MS人数は14,265人で、前年度から1,108人減少しました。
2004年の調査以降は毎年減少するトレンドが継続しています。
製薬会社と同様に、厳しい経営環境が示唆されるデータですね。
大手医薬品卸さんも早期退職の実施するなど、今後も経営環境は厳しさを増すことが予想されています。
まとめ
今回は、最新のMR白書と医薬品卸MSデータからトレンドを解説しました。
この記事の要約
●国内MRの総数は49,682人で、前年度から2,166人減少。
●コントラクトMRの比率が8.9%(4,409人)と増加している。
●MRの薬剤師比率は8.7%(4,311人)で減少傾向にある。
●管理職の人数は7,566人で、前年度から161人減少しました。
●MS人数は14,265人で、前年度から1,108人減少
国内の製薬業界は今後も厳しい環境が続きますが、自分の目指すキャリア像や人生設計に向かってコツコツ努力していけば問題ありません。
この記事では、業界情報・資産形成・副業の情報を今後も発信しますのでぜひ参考にしていただけると嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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