資産形成を考える時に、こんな疑問が浮かびませんか?
もっとバランスのよい方法はあるの?
そこでこの記事では、FP1級の渡邉さんから「貯蓄と投資の割合」をテーマに解説していただきます!
株式会社AWARDの渡邉です。
今回は「貯蓄と投資の割合」について書かせていただきます。
メディ太さんから”年収700万円の方を例にとって書いて欲しい”というリクエストをいただいたので、モデルの事例を元にご紹介させていただきたいと思います。
この記事の結論
●貯蓄と投資の割合を定めるには、①~③のステップを踏んでいくのがお勧め
●①手取りの収入を把握する
●②家計の収支を確認する(理想の家計バランスとの比較)
●③手元のお金を「生活防衛資金」「直近数年以内に使う資金」「余裕資金」にわける
●インフレを考慮した資産形成を考える必要がある
最適な貯蓄と投資の割合を定める3ステップ
貯蓄と投資の割合を定めるには、以下3つのステップを踏んでいくのがお勧めです。
- 貯蓄と投資の割合を定める3ステップ
- ①手取りの収入を把握する
②家計の収支を確認する(理想の家計バランスとの比較)
③手元のお金を「生活防衛資金」「直近数年以内に使う資金」「余裕資金」にわける
「貯蓄と投資の割合」というのを考える前に、まずは家計の収支をチェックしておきたいところです。
どのくらいの収入があって、どのくらいの支出があるのかがわかっていない状態だと、貯蓄や投資の計画が立てにくいためです。
難しそうだけど、私にもできますか?
もちろんできますよ!
製薬会社の方がイメージしやすいように、佐藤さんという年収700万円のモデルケースで解説していきます。
モデルケース(佐藤MR)
・佐藤さん→職業は製薬会社のMR、35歳、年収700万円
・奥様→30歳の専業主婦
・子供→5歳の男の子
・世帯年収700万円
・世帯貯蓄1000万円
【ステップ①】手取りの収入を把握する~年収700万円の手取り額は?~
まずは手取り収入を把握しましょう。
年収に対して”手取り金額(実際にもらえる金額)は、もっと少ない“ということをみなさんもご存じのことでしょう。
仮に年収700万円であれば「だいたいの手取り金額は520万円くらいになる」ということが把握できます。
モデルケースの佐藤MRの場合、「年収700万円」「手取り収入520万円」「給与の手取り年420万円(月35万円)」「賞与手取り年100万円(50万円×2)」として考えてみましょう。
たしかに自分の給与明細を見るといつもビックリします。
その気持ちはわかります。
所得税・住民税・社会保険料など、様々なお金が額面の給与から引かれているのです。
年収1,000万円の方の手取り額は、おおよそ720万円前後になる試算ですよ。
図を引用した会計事務所さんのHPでは、年収100万円~年収1億円までの手取り額一覧をわかりやすく掲載されています。
引用した図は「独身(配偶者、扶養親族なし)」を前提条件として作成されていますので、当記事のモデルとなる佐藤さん(既婚、扶養親族あり)とは若干ずれが生じます。
より正確に手取り金額を知りたい方は、次のどちらかの方法で試算してみましょう。
- 源泉徴収票の記載金額から住民税決定通知書に記載の一年分の住民税額を引く
- 源泉徴収票の記載金額から給与明細に記載の住民税1ヵ月分×12で計算した金額を引く
ちなみに年収700万円といっても、「月々もらっている給与」と「年に2回もらえる賞与」を分けて考えた方が、家計のコントロールはしやすくなると思います。
【ステップ②】家計の収支を確認する~理想の家計バランスとの比較)
収入が把握できたら、次は収支のバランスをチェックしてみましょう。
参考にできる情報はありますか?
たしかに「収支のバランス」といっても、各家庭で支出の割合はかなり異なるので、イメージがしにくいですよね。
例えば、プレジデントオンラインの”理想の家計バランス表”を参考にしてみてはいかがでしょうか?(上表)
当記事のモデルとなる佐藤MRは、”夫婦と小学生以下の子供”ということになりますので、以下の収支バランスが目安となります。
理想の家計バランス表 | 佐藤MRの家計目安 (月手取り35万円) | |
食費 | 14% | 49,000円 |
住居費 | 25% | 87,500円 |
水道光熱費 | 6% | 21,000円 |
通信費 | 5% | 17,500円 |
小遣い | 8% | 28,000円 |
教育費 | 10% | 35,000円 |
趣味・娯楽費 | 2% | 7,000円 |
被服費 | 3% | 10,500円 |
交際費 | 2% | 7,000円 |
日用雑貨費 | 2% | 7,000円 |
その他 | 3% | 10,500円 |
保険料 | 8% | 28,000円 |
貯蓄 | 12% | 42,000円 |
合計 | 100% | 350,000円 |
ちなみに、「どのくらい何にお金を使っているか全くわからない」という方は、過去の当連載シリーズでご紹介した”マネーフォワードME“などを使ってみるのも良いでしょう。
わたしもマネーフォワードMEを使っています。
設定さえしっかりしてしまえば、クレジットカードで使った支出の項目をAIが勝手に判断して自動的に家計簿に反映してくれたりするので、とても便利です。
「しっかりと家計を管理していきたい」という方は、何かしらの家計簿アプリの導入をお勧めします。
- 家計簿アプリマネーフォワードMEの特徴
- ①家計簿アプリ、資産管理アプリの中で利用率No.1
②複数のクレジットカードや銀行口座をまとめて管理できる
③毎日の支出が自動で記録されるため、家計簿を入力する手間がかからない
④レシートもカメラで撮影するだけで自動入力できるので便利
⑤スマートフォンのiOS・Androidどちらにも対応している
⑥セキュリティ対策が充実している
過度に不安視しなくても大丈夫ですよ。
この事例よりも多くお金を使っているなら、支出に見直しの余地があるかもしれません。
でも、これから支出を改善すればリカバリー可能です。
一般的な年収700万円の方の例の場合は先ほどのような支出バランスで良いと思います。
ただ、こちらのブログを見ている方は、モデルの佐藤MRと同じく製薬会社に勤務されている方が多いとメディ太さんから聞いています。
そこで、上記の支出バランスから、さらに削減できそうな部分を少しコメントさせていただきますね。
住居費の補足解説
住居環境を変えるというのはすぐにはできませんから「住居費を削減したくでもできない」という方は他の支出に着目するようにしましょう。
家賃補助が手厚い会社にお勤めの方の場合、住居費は87,500円よりは安くできるかもしれません。
一方で、家を買った場合、逆に住居費をこの範囲内でおさめるのは、かなり難しいかと思います。
通信費の補足解説
通信費は総務省の取り組みで、この家計バランス表ができたときよりはかなり安くなっています。
特に携帯電話代に関しては割安なプランに見直すことで、かなり安くすることもできそうです。
保険料の補足解説
保険料は正直わたしの感覚だとこの家族構成で28,000円はかけ過ぎかな?という印象を持ちます。
今回のモデルの佐藤家は貯蓄額が1000万円ある前提条件なので、お子さんのための収入保障保険くらいに限って加入することにすれば、5,000円程度でも十分に手厚い保障が作れそうです。
製薬会社にお勤めで付加給付も充実しているのであれば、保険の必要性はさらに薄そうですよね。
さらに詳しい考え方は、当連載記事の中から前回の「がん保険・医療保険の考え方」、前々回「生命保険の選び方」をご参照いただければと思います。
年収700万円で理想的な家計だと年間貯蓄額は100万円が目安
さて、年収700万円の場合、理想的な家計バランスだと”月々42,000円の貯蓄”が可能とわかりました。
- 月々42,000円×12ヵ月=504,000円
1年間で考えると、約50万円の貯蓄ができるということです。
しかし、ここで忘れてはならないのが”賞与“の部分です。
佐藤MRの手取り賞与は年間で100万円でしたので、これをどのくらい貯蓄できるかによって、金額はかなり変わってきます。
仮に半分は自由に使って、残りの半分を貯蓄に回すことにしてみましょう。
そうすると、賞与で貯まるのは1年間に50万円ということになります。
つまり、「月々の貯蓄分+賞与の貯蓄分」を合わせると、年収700万円の方はおおよそ100万円が貯まることになります。
佐藤MRは35歳ですから、退職するのが60歳と仮定すると、退職まであと25年間あります。
現在の貯蓄水準を保つだけでも、佐藤家では”100万円×25年=2500万円”がこれから貯まることになります。
前提条件で現在の貯蓄額を1000万円にしていたので、厳密には佐藤MRが60歳の時点で3500万円が貯まる試算になります。
「老後の2000万円問題」というワードが数年前に話題になりましたが、理想の家計バランスを保つことができれば、それだけでも2000万円問題はクリアできる、ということになります。
【ステップ3】手元のお金を3つに分ける
ここまで収支についてチェックしてきたので、いよいよ貯蓄と投資の割合について考えていきます。
「手元のお金を3つに分ける」という方法をご紹介しますね。
- 手元のお金を3つに分ける方法
- ①生活防衛資金→すぐに使えるお金(生活費の3ヵ月分が目安)
②直近数年以内に使う資金→5年以内に必ず使うことが決まっているお金
③余裕資金→①と②に該当しないお金
3つの分け方を詳しく解説していきます。
手元の資金の分け方①生活防衛資金
生活防衛資金とは、「生活費の3ヵ月分ほどを、すぐに使えるお金として手元に置いておきましょう」という意味を持ったお金です。
ちなみに、「3ヵ月分」のところは「半年」や「2年」など色んな考え方があります。
ここでご紹介する方法の場合、②の”直近数年以内に使うお金”にもわけることを考慮しているので、すぐに使えるお金は3ヵ月分ほどあれば良いかと思います。
佐藤MRの例
理想の家計バランスであれば「月々30万円」ほどを支出として使っています。
つまり、銀行の普通預金に「90万円」ほどのお金があれば良いことになります。
※30万円×3ヵ月分=90万円
3ヵ月分あると、仮に会社都合で退職しなければいけなくなってしまった場合などでも失業保険がもらえるまでの期間の生活費をカバーできます。
また、その他のちょっとした出費をカバーするのにも十分使える金額と言えるでしょう。
手元の資金の分け方②直近数年以内に使う資金
直近数年以内に使う資金とは、「さほど遠くない未来に使うことが決まっているお金」です。
ちょっと曖昧な定義ですが、目安としては、5年以内に必ず使うことが決まっているお金であれば、②に分類すると良いでしょう。
例えば、”近いうちに車の買い替えを予定している”といった場合、それは現預金や安全な国債などで保有しておくべきお金と言えるかと思います。
半年後に車を買うために200万円が必要なのに、その200万円を株式に投資してしまって、いざ購入するタイミングで株価が半分になって100万円しか残っていないと困りますよね。
手元の資金の分け方③余裕資金
余裕資金とは、「①や②に分類されないお金すべて」です。
ここの余裕資金をもとに投資の計画を立てていくことになります。
じゃあ余裕資金をまとめて投資してみます!
そんなに慌てなくて大丈夫ですよ!
余裕資金を”すべて投資に回せばよい”というわけではありません。
投資にはお金が減るリスクが伴いますので。
どのくらいの金額であれば「自分自身が精神的に安定した状態で投資を継続できるか?」というのを考えた上で、余裕資金の資産の構成を考えていくのがお勧めです。
【参考例】佐藤MR(年収700万円)の場合
①~③のお金を分ける方法を佐藤MRの家計を例にして考えてみましょう。
佐藤家は②の直近数年以内に使うお金の予定が”ない”とすると、①の生活防衛資金は90万円ほどが銀行の普通預金にあれば良いことになります。
すると、もともとの貯蓄額1,000万円から①を差し引いて、③の余裕資金が910万円あることになりますよね。
さらに、前項でご紹介した理想の家計バランスを維持できれば、毎年100万円ほどの貯金を積み重ねることができることになります。(月換算で約83,000円)
すでに①の生活防衛資金は確保できているので、”ここから貯まるお金は全て③の余裕資金”と考えても良さそうですね。
仮にこの余裕資金をすべて投資に回すことができるとすると、年間4%程度の利回りが得られれば以下の試算が可能です。
余裕資金を投資に回した試算
《一括投資》
910万円を年利4%で25年間運用⇒約2426万円
※試算:資産形成シミュレーター(金融庁)
《積立投資》
月々8万3千円を年利4%で25年間積立⇒約4267万円
※資産運用シミュレーション(金融庁)
貯蓄の余裕資金と収入の余裕資金を長期運用した額を合計すると、2426万円+4267万円=6693万円となります。
生活防衛資金の90万円をキープしていたとしたら6783万円ですね。
このくらいの資産が作れると佐藤家もかなり将来に対して安心できるのではないでしょうか。
この試算は”余裕資金をすべて投資にまわした場合”を想定しての数値となります。
実際には、個人のリスク許容度に応じて投資の割合は変化させる必要があるでしょう。
貯蓄だけでは25年後に3500万円だったのが、2倍弱ほどになる計算となります。
これならインフレにも負けないで資産形成ができそうですよね。
でも投資はリスクもあるから怖いので、リスクのない貯蓄が好きです。
自分の価値観に合う手段の選択は良いと思います。
個人のリスク許容度に応じて投資の割合を変化させる考え方は大切なので、その点は来月の連載記事で解説させていただきます。
ちなみに、意外と盲点な”貯蓄のリスク”も知っておくと良いですよ。
インフレでお金の価値は劣化する?
「インフレなどでお金の価値が減ってしまう」という話を耳にすることが増えました。
たしかに、貯蓄だけで資産を持つのは実はリスクが高いことでもあります。
モノの価格が上昇することで、お金の価値が減ってしまうからです。
すこし補足解説していきますね。
インフレというのはモノの価格が上がっていくことを指します。
例えば一万円札が手元にあるとしましょう。
この一万円札で100円のお茶を買おうとした場合、100本のお茶が買えますよね。
しかし、インフレ率が2%の世界ではこのお茶の価格は次の年には102円になることになります。
同じように一万円札で102円のお茶を買おうとした場合、何本のお茶が買えるでしょうか?
このとき買えるお茶の本数は98本になります。
つまり、同じ金額のお金があったとしても、交換できるモノやサービスの量はインフレが起こっている世界では減っていくのです。
35歳の方が60歳までの25年間、インフレ率が2%だったとしたら、お金の価値は25年後には約61%になってしまいます。
この方が現在持っている1000万円の価値は25年後には今でいう610万円になっているかもしれないのです。
たしかに、これまで日本はデフレ(物価が上がらない)が続く国でした。
しかし、2022年4月に前年同月比2.5%の物価の上昇が確認され、日本もインフレに突入してきました。
もちろん海外でも、各国でインフレが起こってきています。
ちなみにインフレ率2%というのは、日本銀行がずっと目標としてきた数字です。
長らく物価の上昇をあまり感じない状態が続いていましたが、「今後はインフレの資産に与える影響などにも真剣に向き合わないといけないのでは」と思います。
読者の方から質問
読者の方から、この記事に関連する質問をTwitterで募集しています!
今回は2つの質問をいただいたので渡邉さんから回答します。
【質問①】一括投資と分割投資の考え方はどうすればいい?
その際、何年(何ヶ月)くらい、またはいくらずつ分割するのがいいのか、考え方はありますか?
積立で運用するのもOKです!
1〜5年くらいかけて積立で良いのではないでしょうか。
“どのくらいの期間が最適か”は相場次第です。
積立は効率は良くないため、私なら一括投資をします。
ただし、リスクが許容できるように株式の割合を調整したり、現預金を残したり、債券や不動産を含めたりしてポートフォリオを組みます。
【質問②】投資は不安感が強い場合は貯蓄だけでOK?
この場合は貯蓄を中心にしたライフプランを立てても大丈夫ですか?
はい、もちろん大丈夫です。
貯蓄だけで1億円以上貯めている共働きのご夫婦などは、世の中にいくらでもいらっしゃいます。
公表する方は少ないですけどね。
ただ、貯蓄もインフレや円安(外貨に対して円の価値が落ちること)のリスクも考えると”投資に触れてみる””投資に慣れる”というのを推奨したいです。
自転車に乗るのって、最初はすごく怖くなかったですか?わたしは怖かったです。でも慣れるとスムーズに乗れるようになります。
投資も世界中の方がやっている効果的なお金との付き合い方です。
学んでみると、意外と精神的に安定した状態で取り組めるようになるかもしれません。
満期まで持てば投資額が守られる債券などの投資対象を選択するのも良いでしょう。
ご質問いただきありがとうざいました!
他に質問をしたい方は、メディ太のTwitterへご連絡ください。
まとめ
今回は世帯年収700万円の佐藤家を例に取りながら、貯蓄と投資の割合について解説させていただきました。
この記事のまとめ
●貯蓄と投資の割合を定めるには、①~③のステップを踏んでいくのがお勧め
●①手取りの収入を把握する
●②家計の収支を確認する(理想の家計バランスとの比較)
●③手元のお金を「生活防衛資金」「直近数年以内に使う資金」「余裕資金」にわける
●インフレを考慮した資産形成を考える必要がある
①~③のステップを踏んでいくことで、貯蓄と投資の割合を定めていけます。
家計の収支把握をできていない方も多いと思いますので、家計簿アプリなどの便利ツ―ルを上手く使いこなしていただければと思います。
余裕資金はすべて投資にまわすこともできるのですが、「感情面でそれが難しい」という方は多いです。
実際に余裕資金をどう貯蓄と投資に割り振るかについては、次回解説させていただく予定のインデックス投資の基礎知識のところで、さらに踏み込んで取り上げさせていただきます。
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最後までご覧いただきありがとうざいました!
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