お子さんのいる家庭で将来必ず発生するのが「教育費」です。
皆さんは、具体的に将来どれくらいの教育資金が必要かをイメージできていますか?
子供の希望する進学先次第では支出額が大きく変動する可能性もあるため、早めから準備をしておく必要があります。
そこで、今回は文部科学省などが定期的に調査を行っている「学習費」の調査結果を基に、子供の学費はどれくらいの金額を準備するべきかをまとめてみました。
今回の記事はこんな方にオススメです。
本記事作成にあたっての参考資料
●文部科学省「平成30年度子供の学習費調査の結果」
→公立・私立の「幼稚園・小学校・中学校・高校」に通学させている保護者が1年間に学校教育及び学校外活動で支出した金額を調査したもの。
●日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果」
→子供1人あたりにかける教育費用(高校入学~大学卒業)を定期的に調査・公表している。
【教育費平均額】公立と私立で比較した小学校~大学の学習費合計金額
まずは、小学校~大学までの年間教育費について「公立」と「私立」に分けて平均額をご紹介します。

年間教育費は、合計額を通学期間で割って試算した金額です。
例)公立小学校:193÷6=約32万円(年間)
- 小学校の年間教育費
- ●公立小学校:約32万円(6年間で約193万円)
●私立小学校:約160万円(6年間で約960万円)
- 中学校の年間教育費
- ●公立中学校:約49万円(3年間で約147万円)
●私立中学校:約140万円(3年間で約420万円)
- 高校の年間教育費
- ●公立高校:約50万円(3年間で約150万円)
●私立高校:約100万円(3年間で約300万円)
- 大学の年間教育費
- ●公立大学:約115万円(4年間で約460万円)
●私立大学:約175万円(4年間で約700万円)
【幼稚園の教育費目安】習い事の費用が中心
幼稚園の場合、習い事の費用が年間支出を変動させます。
学習費総額(年)
●公立幼稚園:22万4千円
●私立幼稚園:52万8千円
学校教育費
授業料や、学校納付金等の差額が大きいです。
ただし、幼稚園の無償化が2019年10月からスタートしましたので、この結果は参考程度となります。

学校外活動費
公立と私立での金額差はあるものの、スポーツ等の習い事の比率が多い傾向です。
幼少時にスイミングなどのスポーツを習い事にする方は多いのではないでしょうか。

【小学生の教育費目安】習い事の費用比率が増える時期
小学生になると、公立と私立で金額の差はありますが、塾・家庭教師などの「補助学習費」と呼ばれる習い事の比率が増えてきます。
また、学費の面では公立と私立の「授業料」支出額の差は大きいです。
学習費総額(年)
●公立小学校32万1千円
●私立小学校159万9千円
学校教育費
公立と私立では授業料負担額の差が大きいです。
理由として、公立の小学校は授業料が無償化されていますが、私立の授業料は一部対象者に対する「経済的支援の制度」を全ての世帯が享受することはできません。

経済的支援の制度
このような疑問をお持ちになる方もおられると思います。
現在、文部科学省が平成29年度~令和3年度まで実施中の実証実験は以下の通りです。
経済的支援の実証実験
●補助額:最大10万円/年(学校が代理受領)
●対象:年収400万円未満かつ資産保有額600万円以下の世帯(私立の小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校前期課程、特別支援学校小学部・中学部に通っている児童生徒)
●条件:文部科学省が実施する調査に協力が必要
参考:文部科学省「私立小中学校等に通う児童生徒への経済的支援に関する実証事業について」
学校外活動費
塾など補助学習費の占める割合が多くなっています。
読者の方の中にも、塾・公文・家庭教師などを小学校から習い始めた方がおられるのではないでしょうか。

【中学生の教育費目安】塾などの補助学習費が増加する
中学生では、公立と私立で塾・家庭教師などの「補助学習費」と呼ばれる習い事の金額差がなくなり、ともに支出が増加します。
公立と私立で差が生じる支出は、大半が「授業料」「学校納付金等」の有無による差となります。
私立・公立関係なく、高校に向けた塾などの習い事をする家庭が多いことを示していると予想されます。
学習費総額(年)
●公立中学校48万8千円
●私立中学校では140万6千円
学校教育費
小学校と同じく、公立と私立での授業料負担額の差が大きくなります。
理由は同様に、公立と私立では無償化の有無で差が生じるからです。
「経済的支援の制度」は、中学校も対象となっているので、該当世帯は制度を利用可能です。

学校外活動費
公立・私立ともに塾などの補助学習費支出が大半を占めています。
小学校と比較すると、公立での支出額増加が顕著です。

経済的支援の制度
小学校と同様に、私立中学校にも「経済的支援の制度」が設けられています。
経済的支援の実証実験
●補助額:最大10万円/年(学校が代理受領)
●対象:年収400万円未満かつ資産保有額600万円以下の世帯(私立の小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校前期課程、特別支援学校小学部・中学部に通っている児童生徒)
●条件:文部科学省が実施する調査に協力が必要
参考:文部科学省「私立小中学校等に通う児童生徒への経済的支援に関する実証事業について」
【高校生の教育費目安】2020年からの就学支援金で負担が軽減
国公立の高等学校については、これまで同様、年収910万円未満世帯に対して、授業料相当額の「就学支援金」が支給されています。
また、2020年4月から年収約590万円未満世帯を対象として、私立高校も授業料相当額の就学支援金が支給されています。
学校教育費
「高等学校等就業支援金制度」で就学支援金による実質無償化の恩恵は大きいです。
ただし、現行制度では収入の多い世帯で私立高校に通学する場合は、実質無償化に該当しませんのでご注意ください。

学校外活動費
公立、私立共に補助学習費が多くを占めています。
中学とは異なり、高校では補助学習費支出額が私立の方が上回る点が興味深いですね。

高等学校等就学支援金
2020年4月に高等学校等就学支援金制度の改正が行われました。
公立・私立ともに世帯年収に応じて支援額が変わってきますので、必ず確認しましょう。
申請手続きは書類を学校経由で提出する流れになります。
所得条件の計算式
市町村民税の課税標準額×6% - 市町村民税の調整控除の額(政令指定都市は「調整控除の額」に3/4を乗じる)
※両親2人分の合計額
世帯年収・概要は下図およびリンクをご覧ください。


各都道府県による支援
国による支援以外にも、各都道府県で授業料等の支援を行っているケースがあります。
皆さんがお住いの自治体ホームページを確認すると、掲載されています。
平成30年度にはなりますが、文部科学省が「都道府県別私立高校生への授業料等支援制度」を公開していますので、リンクを掲載します。
【大学生の教育費目安】入学費用と学費データ
ご紹介した文部科学省のデータは高校までになりますので、大学のデータは日本政策金融公庫の「教育費負担の実態調査結果」を参考にします。
在学費用(年)
●私立大学理系192.2万円
●私立大学文系152.1万円
●国公立大学115.0万円
●私立短大176.9万円
在学費用
1年間の在学費用は下図の通りです。
私立理系>私立短大>私立文系>国公立の順となりました。
もし、医学部・薬学部をお子さんが目指す場合はさらに費用がかかることになります。

入学費用
在学費用に加えて、入学費用も発生します。
約100万円は必要となりますので、準備を忘れないように注意しましょう。

高等教育の修学支援新制度
高等教育の修学支援新制度は低所得世帯の学生に大学や短大、専門学校などの授業料、返済不要の奨学金を支給する制度です。
2021年度は、全国大学・短大98%、高専は100%、専門学校は73%が対象となっています。
修学支援制度では一定の要件を満たす住民税非課税世帯・準ずる世帯の学生に対し、下記2つの支援が用意されています。
①授業料・入学金の免除又は減額
②返還不要の給付型奨学金を支給
対象シュミレーションや制度詳細は文部科学省「高等教育の修学支援新制度」をご確認ください。
【教育費貯め方】計画的に貯蓄しながら期間に余裕があれば運用も視野に入れる
教育費は「○年後に○○万円が必要になる」という時期がある程度明確になっているため、早めから堅実に準備を進めることが大切です。
ただし、子供1人に必要な教育費は増加傾向にあり、インフレしていることを考えると余裕があればジュニアNISAなどの制度を使って運用も並行して行う手段も有用だと思います。
まとまった教育費が必要になる時期が、目前~数年後に控えている期間投資などの運用でまかなう行為はおすすめしません。
株式市場の暴落などで必要資金が失われるリスクを考慮すると、必要時期が近くなるほど「現金保有」がよいと思います。
【教育費貯め方①】貯蓄でコツコツ準備する
家計支出を削減し、コツコツ貯蓄しながら教育資金を貯めることを土台とすることが重要です。
さらに、児童手当が支給される世帯の方は、おおよそ1人当たり約200万円が支給されますので有効活用しましょう。
家計見直しのコツは「固定費の削減」から着手することです。
こう思った方がおられるかもしれません。
固定費とは「通信費」「保険」「光熱費」など、生活していると一定額が毎月支出される項目のことです。
これらは1度見直しをすると半自動的に見直し効果が持続するので効果的ですよ!
例えば筆者の場合、特に削減効果が大きかったのは「生命保険」「携帯」「自動車保険」「火災保険」でした。

各項目の内訳は以下の通りです。
Before | After | |
家計簿 | なし | 作成 |
生命保険 | ドル建て終身保険① ドル建て終身保険② 掛け捨て収入保障保険 掛け捨て団体保険 | 掛け捨て収入保障保険 掛け捨て定期保険 掛け捨て団体保険 |
自動車保険 | ネット保険 | ネット保険 (一括見積サイトで比較) |
火災保険 | 入居時に不動産業者から 紹介された保険 | ネット保険 |
医療保険 | 未加入 | 未加入 |
学資保険 | 未加入 | 未加入 |
携帯代 | ソフトバンク | 楽天モバイル |
電気代 | 大手電力会社 | 自宅①オール電化プラン継続 自宅②電力会社乗り換え (一括見積サイトで比較) |
クレジットカード | JALゴールド 楽天ゴールド | JAL CLUB-A 楽天普通 |
NHK | 2ヶ月払い | 12ヶ月払い |
チャレンジ こどもちゃれんじ | 毎月払い | 年払い |
アプリ会費 | 毎月払い | 退会 or 年払い |
楽天経済圏 | あまり利用せず | フル活用 |
ふるさと納税 | 利用済 | 利用済(寄附先を厳選) |
具体的な筆者の実践例はこちらの記事をご覧ください。
【教育費貯め方②】資産運用を補助的に活用する
ジュニアNISAなどの非課税制度を活用し、時間の力(複利)を使って教育資金の足しにするのも有効な戦略の1つです。
特に、お子さんが幼い方で運用期間が15年前後とれる場合は、オススメです。
一方で、まとまった金額が必要になるまであと数年に迫っている場合は、暴落によってお金を失う訳にはいきませんので、現金で確保する方が良いと私は思います。
筆者の場合はジュニアNISAで「eMAXIS Slim全世界株」というインデックスファンドに投資しています。
教育費ということもあり、広く分散されたインデックスファンドの方が自分のリスク許容度に合っていると考えたことが理由です。
教育資金を全て投資で用意するのはリスクが高いのでおすすめしません。
筆者の投資銘柄は利益を確約するものではありませんので、投資は最終的に自己責任でお願い致します。
ジュニアNISAに関して詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
【教育費 シュミレーション】具体的な試算ができるサイト
教育費のシュミレーションができるサイトを2種類ご紹介します。
どちらも高校までは当記事でご紹介した文部科学省「子供の学習費調査」をベースに試算されています。
注意点として、当記事でご紹介した調査よりも数年前のデータで試算されるので、若干数値の誤差が生じると思いますのでご了承ください。
●高精度計算サイト-Keisan-「教育にかかる費用の計算」
●保険見直し本舗「教育費シュミレーション」
まとめ
今回は、幼稚園~大学までの学習費に関して、公表されているデータを基にご紹介しました。
教育費はインフレ傾向にあるとの報道もありますので、早期から準備をすることが大事だと思います。
自助努力と国の制度をうまく活用しながら、子供の明るい未来に向けて、親としてできる限りのことを行動していきましょう。
本日も最後まで読んでいただきありがとうございました!
【参考資料】
文部科学省「平成30年度子供の学習費調査の結果」
文部科学省「私立小中学校等に通う児童生徒への経済的支援に関する実証事業について」
日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果」
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家計簿を作成したい方はこちらをご覧ください。
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